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2007年11月01日(木) 00時00分

mixiの「足あと」で誘う怪しい業者読売新聞


イラスト・成田明也

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の代名詞として、すっかりおなじみになったmixiだが、ユーザーが増えるにつれて弊害やトラブルが目立ってきた。SNSならではの機能「足あと」を使った、怪しい業者の勧誘が増えてきている。(テクニカルライター・三上洋)

mixiの「足あと」とは?

 mixi(ミクシー)は、日記やメッセージなどのコミュニケーション機能を中心とした会員サービス。爆発的にユーザーが増えて、約1100万人以上が利用している。プライベートの日記や、親しい人とのメッセージに使っている人が多いだろう。

 mixiには様々な機能があるが、ユーザーの興味を引くと思われる機能に「足あと」がある。「足あと」とは、その名のとおり訪問者の履歴データのこと。あなたのページや日記を誰が見にきたのかがわかる機能だ。


mixiの「足あと」の例。詐欺的業者が女性名の偽アカウントを作り、わざと「足あと」を残していくことがある

 例えば、あなたが日記を書いたとしよう。最も気になるのは「何人読んだか、読んだのは誰か?」ということだろう。日記を書けば、登録した友人(マイミクシィ、通称マイミク)の画面に、あなたの日記のタイトルが表示される。友人がタイトルをクリックして日記を見れば、「足あと」に友人の名前が残る仕組みになっている。日記がどれだけ読まれているか人気のバロメーターともなるので、「足あと」をチェックするのが日課となっている人も多い。

 もちろん友人でないほかのユーザーの訪問履歴もわかる。ユーザーの名前をクリックすればプロフィルが表示されるので、「どんな人が日記を見てくれたのか」がわかるわけだ。ここから新しい友人を増やしたり、旧友と連絡が取れたりすることもある。

 また「足あと」をアクセス数アップのために使う人もいる。多くの人が自分の「足あと」を見て「誰が見に来てくれたのかな?」とチェックしている。そこで他人の日記やページを巡回し、あえて「足あと」を残していく。すると「足あと」をたどって、自分のページを見に来る人が増えるという流れだ。

 日記をたくさんの人に見てもらいたい、友人を増やしたいと考えている人が、アクセス数を上げるために「足あと」を利用しているわけだ。

「足あと」でアクセス数を集める

 コミュニケーションが最大の目的であるmixiにとって、「足あと」は目玉機能とも言えるもの。しかし残念なことに「足あと」を悪用する業者がいる。mixiでは会員による商用利用が禁止されているのだが、監視の目をかいくぐって利用しているようだ。

 実際に筆者の足あとを見てみると、友人にまじって知らない女性名の訪問者がいくつもある。「ひとみ」「さおり」といった名前なのでクリックしてみると、女性が自分の顔写真を堂々と公開している。それもモデルかと間違うほどの美人さん。「オレってもてるのかな?」と思ってしまいそうだ。しかし、残念ながら筆者が女性に人気だったことなど、生まれてこの方ない。これ全部が業者の勧誘なのである。

 顔写真を堂々と公開している人のプロフィルを見ると、絵文字をバリバリに使い、いかにも女性風の内容となっている。そして日記を見ると「ブログもやってます!見てね!」というリンクがある。リンクをクリックすると、飛んだ先はアダルトサイトなのである。つまりアダルトサイト業者が作った勧誘用のアカウントだったのだ。

 この手の業者による勧誘はいくつもある。ちょっと見ただけでも

アダルトサイト(無料で登録させて後から料金を請求する詐欺的業者) ワンクリック詐欺(動画を見ようとすると請求画面になるもの) マルチ商法(高額な商品を売りつけるネズミ講のようなもの) ダイエット関連商品の販売(高額なダイエット用食品などを販売)

 など、詐欺的業者をいくつも発見できた。多くが「足あと」を使っており、ユーザーをクリックさせることが目的だ。mixiではこれら業者のアカウントを発見次第、削除しているが、あまりに宣伝目的のアカウントが多いため、すべては削除し切れていないのが現実だ。

自動巡回ツールまで存在

 これらの詐欺的業者は、自動巡回ツールを使っている。自動巡回ツールとは、mixiのユーザーページを芋づる式に周り、足あとを付けるツールのこと。自動巡回ツールに任せておけば、大量のユーザーページに足あとを残せるため、業者がアクセス数稼ぎのために使っている。

 mixiでは規約の禁止事項で、「無差別にメッセージを送信し、無差別にマイミクシィの追加を依頼し、又は無差別に足あとをつける行為」として、自動巡回ツールの利用を禁止している。しかし自動巡回ツールは続々と生まれており、中には「アクセス数をアップさせるツール」として高額で販売している例もある。さらに大手検索サイトの広告にも「mixiでアクセスアップ」などというキャッチコピーで、堂々と有料の自動巡回ツールが宣伝されている。自動巡回ツールはmixiの規約違反ではあるものの、違法ツールではないので広告を差し止めることができないのかもしれない。

 これらの自動巡回ツールは、mixi以外のSNSにも対応しているものが多い。例えばauのケータイでも使える「GREE」なども対象になっており、GREEでも「アクセス履歴」に残せるようになっている。GREEにも同様に詐欺的業者の勧誘ページが見受けられる。

 このようにSNSの「足あと」や「アクセス履歴」には、詐欺的業者からの訪問データが残っている。知らない人からの「足あと」や「アクセス履歴」は、クリックしないほうがいい。特に「足あと」に残った人の名前が、知らない女性名で、かつ顔写真を堂々と公開している場合、業者の宣伝である可能性が高い。むやみにクリックしないほうがいいだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20071101nt0a.htm