記事登録
2007年11月01日(木) 21時05分

「授業料は食事で」NOVA労組が独自サービスオーマイニュース

 英会話学校最大手NOVA(大阪市、猿橋望社長=10月25日解任)の経営破綻問題で、同校の外国人講師らが加入する労働組合は1日、日本外国特派員協会で記者会見し、授業料代わりに食べ物を受け取る「Lessons-for-Food」という独自プログラムを始めると発表した。住むところも食べる物もないなかで、唯一の武器である語学を生かし、異国での難局を乗り切ろうとしている。

 「Lessons-for-Food」では、元NOVAの生徒など外国語を学びたい人と、仕事のない外国人講師を、労組が事務局となってマッチングする。生徒は食料品や食事を、授業の対価として払うシステムだ。

 NOVA には複数の個人加入の労組があるが、このうち関東近辺の外国人講師や日本人スタッフらが加入する全国一般労働組合東京南部NOVA支部が主体となる。全国 600カ所以上あった教室が閉鎖されたため、公園のベンチや公共施設などで授業を行うことを想定している。場所が確保され次第、実施したいという。

 会見したNOVA支部のBob Tench委員長は、組合に加入する外国人講師や日本人スタッフの数は分からないと繰り返した。毎日膨大な数の相談が寄せられ、1日に何百人もが加入したり脱退する混乱状態が続いているからだ。「毎日状況は変わっている。1日何十本もの電話相談を受けているが、みなストレスを抱えている」(Tench委員長)。

 平均勤続年数が3年あまりと短いNOVAにあって、Tench委員長は勤続13年のベテランだ。だが、組合活動を始めたここ数年は、査定を下げられたり、1年間で13通もの警告を送りつけられたりした。

 「普通なら、会社は社員のことを知るために、組合と対話の場を持ちたいもの。だがNOVAでは、会社と講師らとのあいだにはコミュニケーションがまったくなかった。給料の遅配にしても、『いつ払うから』というのはウソばかり。会社は交渉に応じているフリだけ。仕事の安定(job security)を保障する気がまったくなかった」。

 <講師は全員ネイティブスピーカーの外国人>。華々しい宣伝コピーの下に押し込められた外国人講師らの不満をぶちまけた。

 会見には、日本に来て間もないという女性講師2人も出席。片道切符でやってきた日本で直面した、生活の困窮を語った。

 NOVAが借り上げていたアパートに住んでいるオーストラリア出身のNatasha Steeleさんは現在、給料の遅配のほか、アパートの退去勧告に悩んでいる。

 「会社から次のアパートに移ってくれといわれたが、その翌日には移転先のアパートに入れなくなったといわれた。一体どうしたらいいのか」。会社が給料から天引きしてアパートに払っていたはずの住居費が、実際には支払われていなかったケースもあるという。

 1年契約が繰り返されるNOVA講師には、失業保険も健康保険も何もない。Steeleさんは

 「今年初めに日本に来たばかり。日本語が分からない状況では、仕事を探しようもない。組合の会合に参加しようにも、その電車代がない。2週間まともに食べていなかったのを見かねた友人が、パン食べ放題の店に連れて行ってくれて、ようやくお腹いっぱい食事ができた」

と悔しさをにじませた。

 組合では、「Lessons-for-Food」と平行して、労組のウェブサイト上に基金を設立。寄付金を募り、労組活動を行う講師らの交通費や食事代にあてていくという。

(記者:軸丸 靖子)

【関連記事】
軸丸 靖子さんの他の記事を読む

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071101-00000006-omn-soci