記事登録
2007年09月17日(月) 15時00分

“振り込ませない”詐欺が頻発 手口巧妙化産経新聞

 「振り込め詐欺」の手口がますます巧妙化し、高額被害に遭うケースも増えている。金融機関の窓口での監視をかわそうと公園に呼び出したり、被害者宅まで出向いたりして現金を受け取る“振り込ませない”手口が東京都内で頻発。口座に振り込ませる従来の手口でも1000万円を超える高額被害が増加しており、関係機関の注意喚起が一層求められる。(加田智之)

■手渡し

 「弁護士事務所の人が取りに行くから金を渡してほしい」。東京都練馬区に住む無職女性(79)は8月下旬、孫を装った男から電話を受けた。借金の連帯保証人の解除のため現金がいると泣きつかれ、女性は自宅に来た事務所の職員を名乗る若い男に現金300万円を手渡した。

 一方、板橋区の女性(87)は8月上旬、孫を装った男から友人のバイクの修理名目で50万円を要求された。「金融会社の人がお金を取りに行くが、おばあちゃんの住所を教えたくない」。自宅近くの公園に呼び出された女性は、公園にいた男から現金と引き換えに「領収書」を渡された。

 振り込ませない手口の増加について、警視庁幹部は「被害者はよくある手口は知っていたはず。だまされたのは、なじみの薄い手口だったからだろう」と分析。「顔を覚えられる可能性もあり、被害者がすぐ通報したら間違いなく捕まる」と手口の大胆さを指摘する。

■他人事

 口座に振り込ませる従来の手口も巧妙化している。都内で今年上半期(1〜6月)に発生した振り込め詐欺は1055件。そのうち、キャッシュカードを現金自動預払機(ATM)まで持参させ、被害者の口座から指定口座へ振り込ませる手口が昨年の5.5%から約4割に急増した。

 一方、従来の現金を振り込ませる手口の被害は全体の0・9%、9件(同)にとどまり、昨年の約7割から大幅に減少。今年1月に改正された本人確認法施行令でATMからの現金振り込みが1回10万円までに制限されたことが背景にあるとみられる。

 警視庁が300万円以上を詐取された都内の被害者を調査したところ、ここ数年は大半が「振り込め詐欺の知識を持っていた」と答えている一方、約9割は「当事者になるとは思わなかった」と回答。被害にあうまでは“他人事”の実態が浮かぶ。

■高額化

 被害額の高額化も深刻だ。警視庁によると、都内で発生した被害総額1000万円以上の「高額」振り込め詐欺事件は昨年9〜12月は2件だったが、今年はすでに24件(14日現在)に上る。

 埼玉県春日部市の男性会社員(54)は、流出した個人情報の消去名目で6月からの2カ月間で61回にわたって計3775万円をだまし取られた。八王子の男性(73)も、息子を名乗る男に「相場で損をした」と7月までの約3カ月間で31回、計5000万円を詐取された。いずれも一度現金を振り込ませた後、口実をつけてさらに現金を要求していた。

 振り込め詐欺に詳しい栗宇一樹弁護士は「新しい手口でも本人が電話をかけ直すなど冷静に対応すれば詐欺と気づくはず」と指摘。「高齢者が1日に何度も百万単位でお金を下ろすのは不自然。銀行などは預金を下ろす際もチェックすべきだ」と訴える。

【関連記事】
振り込めで1900万円被害 埼玉の80歳女性
振り込め詐欺が高額化 件数微減も10億円目前
振り込め詐欺で5千万円被害 都内で過去最高
振り込め詐欺で元タレントマネジャーら逮捕
デリヘル利用者の振り込め被害多発 名簿流出か

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070917-00000907-san-soci