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2007年07月17日(火) 00時00分

「炎上」からネット世論が見える読売新聞

 ブログの書き込みに、批判的なコメントばかりが大量に付き収拾不能となる——「炎上」という名のその状態は、しばしばネット上で話題となる。そんな「炎上」の功罪について、元ライブドア副社長で「ブログ炎上」の著者、伊地知晋一・ゼロスタートコミュニケーションズ専務に聞いた。

ネットと現実社会、根幹は同じ

伊地知 晋一  いじち・しんいち
ゼロスタートコミュニケーションズ専務
1968年、鹿児島県生まれ。2000年、在籍していたプロジーグループがオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)に買収されたことにより、同社入り。2003年、ライブドア副社長として同社のブログサービスを始める。2006年6月からゼロスタートコミュニケーションズ専務。
——ライブドア時代に「史上最大の炎上」を目の当たりにしたそうですが。

伊地知 ライブドアに東京地検特捜部の捜索が入った2006年1月、当時社長だった堀江(貴文)さんのブログに、たった一晩で1万以上のコメントが殺到しました。

 1000もコメントが付けば炎上としては大きい方なのに、このままでは2万、3万まで行くだろうと思いました。コメントの殺到でデータ量が増えすぎ、パソコンの表示限界に近づいたので、やむを得ずコメントの受け付けを止めました。

——炎上とは、要するに「袋だたき」ということですか。

伊地知 炎上イコール袋だたきとは、一概には言えません。中には応援してくれるコメントが付いていることもあります。

 炎上したブログのコメントを見ていくと、一方的な批判や中傷ばかりではなく、親切心で教えてくるものや注意してくれている意見も少なくありません。過激な表現の方が目立ってしまうため、全体として悪く見えてしまう傾向がありますが、よく見るといい意見もあるのです。

——「いい炎上」というものもある?

伊地知 コメントが多いことと、炎上とは違います。批判的な意見ばかりが殺到する状況を、炎上と定義しています。賛否両論のコメントが付いて議論が盛り上がっているなら、それはブログが活性化している状態です。

 炎上したことで、「実は自分は嫌われていたんだ」と気づいたり、それにより態度を改められたりする、そんなきっかけにもなり得ます。炎上によって「気づき」を与えられることもあるのではないでしょうか。

——炎上の原因は?

伊地知 第一に、リアルな世界で言っても不快感を与える内容です。ネットも現実社会も根幹は同じで、不快感を与えるような内容は嫌われます。違うのは、ネットでは、現実社会と比較にならないほど悪い情報が簡単に広まってしまうこと。だから炎上となりやすいのです。

 第二は、宗教問題などのように、世論が分かれている話題です。それを十分知識もないのに一刀両断にしてしまったりすると、「いい加減なやつだ」と思われて炎上してしまう例が多いのです。意見が良い悪い以前の問題です。

 三番目が、企業のヤラセです。ネットは演出のない世界と言えますから、ちょっとしたヤラセでも、嫌われる傾向が強いのです。やはりお客さんにウソをついてはいけないということですね。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20070713nt11.htm