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2007年06月29日(金) 02時57分

親密に「裏ビジネス」 緒方元長官と満井元社長朝日新聞

 朝鮮総連中央本部が入る建物・土地の登記移転をめぐり、公安調査庁の元長官・緒方重威(しげたけ)容疑者(73)が詐欺の疑いで逮捕された。事件の背景には、住宅金融専門会社(住専)の大口融資先だった不動産会社の元社長・満井忠男容疑者(73)との不可解な関係が浮かび上がる。満井元社長はバブル後も「裏ビジネス」の世界で暗躍、緒方元長官を引き込んで再開発や投資話に関与していた。

 東京・六本木の中心部にある通称「TSKビル」。70年代前半、暴力団組長(故人)らが設立した。約1200坪の敷地に、複数のビルが立ち並び、高級クラブやレストラン、マンションなどがあった。現在は老朽化が激しく「幽霊ビル」とも呼ばれている。権利関係が複雑で、超一等地にありながら再開発が難航している。不動産業界では知られた物件だ。

 緒方元長官と満井元社長の関係を知る関係者によると、このビルの立ち退き交渉や所有権の移転に満井元社長は数年前から携わっていた。近年になって緒方元長官も加わったという。転売を巡って取引に関与した都内の不動産業者が、緒方元長官らに「数億円をだまし取られた」として、東京地検に被害を訴えている。

 2人が出会ったのは98年という。満井元社長がこの年に強制執行妨害容疑で逮捕された際、緒方元長官が弁護人を引き受けたことがきっかけで親交を結ぶようになった。その後、元社長の会社の土地売却などで、2人は仕事をともにすることが多くなったという。

 2人の親密さが最初に明るみに出たのは03年。他人に買い取られていた元社長の東京都世田谷区内の自宅を、緒方元長官が親族会社の名義で買い戻した。この際、緒方元長官側はこの物件を担保に4億円を超える借金をしているとみられる。

 元社長への肩入れについて緒方元長官は「法律相談に来た人以上に親密で、家族ぐるみの付き合い」と説明する。さらに「ただのブローカーではなく信念を持って立ち向かっていく人」と評価し、「窮地を救ってやろうと思った」という。

 2人の「ビジネス」は、別の出資話でも展開された。2人が05年にかかわりを持った都内の商社の元代表によると、2人が当時、「米金融機関の巨額の預金証書を担保に資金調達をする」といった話をしていたという。複数の関係者が「証書は偽物だったはず」と話している。

 また満井元社長から「農協の億単位の手形があるから、これで会社の運転資金を作ったらどうか」と持ちかけられたこともあったという。元代表は「すぐに危ない話だと分かったので断った」という。その農協はすでに破綻(はたん)していた。

 満井元社長はもともとこの商社関係者と親交があったが、緒方元長官はこの時期、満井元社長の仲介で会社の一室を事務所として使っていた。

 また、「2人は都内の医療機器製造会社の経営にもかかわっていた」と関係者は話す。信用調査会社によると、緒方元長官はこの会社の大株主になっている。

 満井元社長に誘われ、緒方元長官は何度か一緒に韓国などの海外へ旅行していたという。「要は満井元社長に取り込まれたということ。元社長は、商売を続ける上で緒方元長官の名前を大いに活用したはずだ」と関係者はみる。

http://www.asahi.com/national/update/0629/TKY200706280421.html