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2007年06月29日(金) 15時00分

血液サラサラは顕微鏡で細工、元営業マンが商法を暴露読売新聞

 「血液がサラサラになる」と健康効果をうたい、高額のブレスレットを売りつけていた元営業マンが読売新聞の取材に応じ、「セールストークには科学的な根拠は何もない」と詐欺的商法の内幕を語った。

 顧客の血液を「ドロドロ」に見せかける血液検査の実演、効果を演出する再検査には巧妙な細工がある。呉服販売会社と提携し、展示即売会に集まったお年寄りらを集中的に狙ったという。「効果が出ない物に、大切な老後の資金を使わせてしまった。本当に申し訳ない」と悔やんでいる。

 取材に応じたのは、今年までの約1年間、大阪市内の貴金属製造販売会社に勤務した40歳代の男性。

 男性によると、入社後すぐに3日間の研修でノウハウをたたき込まれた。血液をガラス板に挟んで顕微鏡にかけ、映像をモニター画面に映す。血液の多い部分に焦点を合わすと、「ドロドロ」に見える。ガラス板を指先で軽く押し、血液を薄く広げると、「サラサラ」の血液のように映る。

 男性はペン型の小型採血器を使って自分の指から100回以上採血し、手を血だらけにしながら練習を重ねた。この段階で嫌気がさして辞めた同僚もいた。

 上司から厳しく指導されたのは、医師法や、薬事法違反での摘発逃れのやり方だ。小型採血器は客自身に使用させる。営業マンが客から採血すれば医師法違反になるからだ。薬事法に抵触する「効く」「治る」などの効能を口にしない。巧みに不安をあおり、「ブレスレットをつけた方がいいですね」と助言する形で売り込むよう指示された。

 「血液がドロドロですから、このままでは脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞になりますよ」

 昨年夏、中部地方で開かれた呉服の展示即売会。男性はその一角に設けられた自社コーナーで、採血した60歳代の女性に顕微鏡のモニター画面を示し、そう説明した。女性が動揺しているのがわかった。

 商品の銀製ブレスレットを左手首に試着してもらってから約15分後。再検査で「サラサラ」の血液の映像が画面に映ると、周囲からどよめきが起きた。「特殊加工でマイナスイオンが発生し、血液がサラサラになるんです」。お決まりのセールストークで、この日、40万〜15万円のブレスレットを数本売った。

 社員は約20人おり、提携する複数の呉服販売会社が全国で開く即売会に派遣された。「呉服会社の信用を利用できるので売りやすかった」という。売り上げの65%は協力費などとして提携先と会場側に支払われるが、残り35%の自社の取り分だけで月1億円を超えることもあった。男性は「提携先も『おかしな商売』と思っているはずなのに知らん顔だった」と話した。

 男性の会社は昨年、沖縄県警に薬事法違反容疑で摘発され、社長ら2人が罰金50万円の略式命令を受けた。男性は「その後も同じようなやり方を続けていた」と証言するが、社長は読売新聞の取材に「血液を見せる販売方法はやめ、各会場に置いていた顕微鏡も回収した。社員指導を徹底したが、現場で勝手に続けている可能性もあるので再度チェックしたい」と話した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070629i4w7.htm