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2007年06月29日(金) 17時10分

元長官が出資期待の男性、別事業で「詐欺的商法」朝日新聞

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部が入る土地・建物の売却を巡る詐欺事件に絡み、購入資金35億円を出資するとしていた投資家の男性(41)が昨夏、別の事業の出資についての民事訴訟で「詐欺的商法」と認定され、1100万円の損害賠償を命じられていたことが分かった。判決は確定しているが、原告によると、賠償金は現在も支払われていないという。

 詐欺容疑で東京地検特捜部に逮捕された元公安調査庁長官で弁護士の緒方重威(しげたけ)容疑者(73)はこれまでの記者会見などで、海外で資金運用しているとする投資家を信用し、総連側の不動産への出資は確実だと思っていたなどと説明。だが、交渉の段階でこの投資家は賠償金支払いの義務を負っていたことになり、架空の投資話だった疑いがさらに強まった。特捜部はこの投資家からも事情聴取し、取引経緯を調べている。

 判決などによると、投資家らは02年5月、クレジットカード会社を設立、代表取締役となった。農事組合法人を舞台にした詐欺事件で今年2月に東京地検に逮捕された同法人元理事も取締役に就任している。

 原告の東京都内の会社社長は朝日新聞の取材に応じ、投資家との取引について説明。それによると、投資家とは知人を介して知り合ったという。投資家は「資本金は5億円あり、(法人元理事が会長の)華僑の団体から49億円の融資を受けている」と資金の潤沢さをアピールしたという。社長は信用して加盟店契約を結び、02年10月までに会費など計約1100万円を支払った。

 しかし、カード事業は一向に開始されず、社長は03年9月、損害賠償を求めて投資家らを訴えた。

 判決では、5億円の資本金について、「払い込まれていた事実は認めるに足りない」と認定、カード事業そのものも「実現可能性はなく、詐欺的商法にあたると認めるのが相当」と切り捨てた。そのうえで、投資家と法人元理事に1100万円の損害賠償を命じた。

 原告の社長は「現在も1100万円は返ってこない。支払う気がないのだろう」と話している。

 この投資家は過去にヘリコプター事業も行っていた。富山県内のあるヘリコプター会社社長によると、この社長は01年ごろ、投資家が経営していた会社にヘリコプターの操縦士の派遣を依頼。投資家は「用意します」と承諾したが、当日に操縦士は現れず、計画していた遊覧飛行が中止となったという。社長は投資家に電話をしても連絡がとれず、信用できる相手ではなかったとしている。 総連側の不動産売却話をめぐる緒方元長官のこれまでの説明によると、元長官は、不動産の所有権が移転登記される6日前の5月26日、東京駅構内の喫茶店で初めて面会。投資家は名刺も渡さなかったというが、「海外で60億円規模の資金を運用している。お金は大丈夫です」と出資を請け負ったため信用したとしていた。

http://www.asahi.com/national/update/0629/TKY200706290310.html