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2007年06月26日(火) 06時08分

「当て逃げ動画」ネット公開で波紋 車所有者は会社クビ朝日新聞

 インターネット上の動画投稿サイトに「当て逃げ」被害にあった瞬間の動画が掲載され、騒動になっている。映された加害車両のナンバーから所有者が割り出され、個人情報がネットでさらされた。所有者の勤務先の会社には電話などの抗議が殺到。同社は所有者を解雇し、ネット上で謝罪した。検挙できていない警察へも批判が向けられている。

 「当て逃げ証拠動画」とタイトルがつき、車載カメラの映像が流れる。夜間の道路を走る途中、近づいてきた白い乗用車にあおられ、追い抜きざまに車の右前部に当てられて逃走される。衝突の瞬間、車体が揺れる様子が映っている。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」に6月中旬に投稿され、25日午後11時までの閲覧数は57万件超。ネット掲示板2ちゃんねるや様々なブログなどで話題になった。

 同掲示板や警視庁竹の塚署などによると、事故は昨年10月、東京都足立区内で起きた。同署は、被害者が車載カメラで写していた動画の提供を受けて加害車両の所有者から事情を聴くなどした。所有者は車を当時貸していて誰が運転していたかわからないといい、捜査は難航していたという。被害者は「捜査が進まない」とネットで動画を公開。それが広まったとみられる。

 加害車両の所有者は、埼玉県内の自動車修理・改造会社の男性だった。割り出された所有者名を元に、住所や年齢、勤務する会社名などが直後からネット上に出回った。

 同社によると、6月12日朝から「犯人を出せ」「隠蔽(いんぺい)工作をしたのか」といった電話が殺到。取引先にまで抗議の電話が行き、ホームページ上の従業員プロフィルなどがネットで広まった。会社周辺でカメラを手にうろつく人も現れ、社員らが事情を聴くと「会社の画像を2ちゃんねるに出すつもりだった」などと話したという。

 同社は電話の殺到で事故のことを初めて知ったという。15日、取引先や職場に迷惑をかけたとして、男性を懲戒免職にした旨を告げるおわびをHPに掲載した。

 竹の塚署へも、「危険な運転者を野放し」などと批判がネット上で書き込まれたという。小原正記副署長は「犯人の特定は容易でない。ネットに出るとは想定していなかった。早く決着をつけるべく人員を補強して捜査している」と話す。

http://www.asahi.com/national/update/0626/TKY200706250400.html