記事登録
2007年06月26日(火) 01時51分

牛肉偽装 また食品への信頼が裏切られた(6月26日付・読売社説)読売新聞

 食品への信頼を裏切る事件がまた起きた。

 北海道の食肉製造加工会社ミートホープが、豚の心臓や羊肉を混ぜた「牛肉ミンチ」を販売していたとして、北海道警が不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で家宅捜索した。詐欺罪の適用も視野に入れているという。

 この容疑以外にも、輸入した牛肉を国産に混ぜて出荷したことが農林水産省の立ち入り検査で判明した。取引先の北海道加ト吉から、賞味期限が切れた冷凍コロッケを引き取り、期限を書き換えて販売したこともわかった。

 コスト削減を優先した社長が自ら指示し、従業員は拒めなかった。ワンマン経営の企業にありがちな体質だ。「業界全体の問題。喜んで買う消費者にも問題がある」と、社長は責任転嫁とも取れる発言を繰り返した。

 直接口に入る食品を製造・販売していることへの責任を、社長はほとんど感じていなかったのではないか。道警は徹底した捜査で、全容を解明してほしい。

 食品に関しては過去、何度も偽装や賞味期限切れ製品の販売といった不祥事が起きている。

 雪印食品は5年前に、輸入牛肉を国産品と偽り、会社解散に追い込まれた。不二家も消費期限切れの牛乳を使ってシュークリームを販売するなどして、他の大手食品会社の傘下に入った。

 違法行為は、消費者に迷惑をかけるうえ、企業の滅亡に直結する。ミートホープも休業し、全従業員を解雇する方向となった。他の企業の経営者は、一連の教訓を肝に銘じるべきだ。

 ミートホープの偽装に関して、規制当局の不手際が指摘されている。昨年2月には、農水省の出先機関に偽装の情報が寄せられていた。農水省は、この件の担当は北海道庁だと判断して、道庁に連絡したと説明するが、道庁側は受け取った記録はない、としている。

 真相はヤブの中だが、早期に偽装を見破る機会を逸したことに変わりはない。この種の情報があった場合、素早く対応できるよう関係省庁、自治体で体制を整えておく必要がある。

 食肉の偽装を見破るには、遺伝子を調べるDNA検査が有力な手段だ。牛肉と他の肉を混ぜても、巧妙に加工すれば発見は難しい。しかし、DNA検査なら確実に違いを識別できる。

 すべての製品をチェックすることは不可能だろう。だが、随時、抜き打ち検査することにしておけば違法行為の抑止に役立つ。農水省は、早急に具体策の検討に入るべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070625ig90.htm