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2007年06月23日(土) 00時00分

カラ出勤止まらん 保育所所長、部下に命じ読売新聞

再発防止の最新システムも悪用

 職員の組織的なカラ残業が問題化した大阪市で、市立保育所の女性所長(59)(係長級)が、出退勤時間を記録するIC(集積回路)チップ入りの職員証を女性保育士(53)に操作させてカラ出勤を繰り返していたことがわかった。職員証による管理システムは、不正の再発防止策として、約1億円をかけて昨年10月から教職員を除く職員を対象に導入。市は、所長を従来の基準より重い停職3か月の懲戒処分にしたが、担当者は、改まらない職員のモラルの低さに頭を抱えている。

 市によると、所長は今年1〜3月、計3回、いずれも午前8時30分ごろ、職場にいる保育士に、所内に置いていた自分の職員証を読み取り機に通すよう電話や電子メールで指示し、そのまま欠勤したり、午後から出勤したりしていた。カラ出勤時間は16・5時間になり、給料にすると約4万2000円分になる。

 市は外部からの指摘で調査。所長は「残業したり、休日出勤したりしたので、埋め合わせをしようと思った」と説明。保育士は「所長がすぐ出勤してくると思い、命じられるままに操作した」と話したという。

 市では以前、職員が出勤簿に押印、残業の場合は課長が超過勤務命令簿に押印する仕組みだったため、一昨年、多くの職場で課長代理が月末にまとめて記入するなどしてカラ残業が行われていたことが発覚。全職員の5分の1にあたる約8000人が処分された。

 その際の、最も重い処分でも「戒告」だったが、市は新システム導入に伴い、「厳罰化」方針を打ち出し、職員証の貸し借りを禁じる内規も設けた。今回は、「信頼回復の途上にあるのに、許せない悪質な行為」として所長を停職処分、保育士を文書訓告とした。

 不正防止策について、担当者の間では、指紋などで本人を特定する生体認証なども話題に上っているが、導入費用は数十億円に上るうえ、「そこまでする必要はない」との意見が強いという。

 市民グループ「見張り番」の松浦米子代表世話人は「結局、職員の体質が変わっていないということ。高価なハイテク機器を導入しても意識改革がなければ無駄なだけ」と話している。

http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/kaikaku/oc70623a.htm