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2007年06月22日(金) 03時02分

グッドウィルの天引き「違法」 厚労省、調査・指導へ朝日新聞

 グッドウィル・グループ(GWG)の子会社で日雇い派遣大手のグッドウィル(東京都港区)が給料から不透明な天引きをしていた問題で、厚生労働省は21日、天引きは賃金不払いで労働基準法違反にあたるとみて調査、指導する方針を固めた。一方、グッドウィルは同日、過去2年間の天引き分を返還すると発表した。対象は80万人で総額37億円に上るという。不透明な天引きは業界全体で横行しており、他社にも大きな影響が及びそうだ。

 グッドウィルは、派遣1回当たり200円を保険料などとして天引きしていた。派遣労働者でつくるグッドウィルユニオンは「強制的な天引きで使い道も不透明」と返還を要求。今月上旬から組合員ら数十人が、各地の労働基準監督署に労基法違反として申告した。

 東京の三田労基署は今年1月、天引きが合法となるために必要な派遣労働者代表との協約が適切に結ばれていなかったとして、グッドウィルをすでに文書指導している。厚労省は、協約が不適切な状態での天引きは、給料の全額現金払いの原則を定めた労基法に違反するとみている。

 ユニオンは天引き問題と同時に、集合時刻から作業を始めるまでの拘束時間の賃金が支払われていない問題も労基署に申告。派遣労働者によると作業開始の1時間かそれ以上前に、派遣先の最寄り駅などへの集合を指定されることが少なくない。「集合時間の10分前に到着」「遅刻厳禁」などと指示され、遅れが重なると給料減につながる仕組みもあったという。

 厚労省は、これらの問題を全国の派遣労働者が一斉申告したことを重視。天引き分の返還表明とは無関係に、三田労基署を中心にグッドウィル側から事情を聴き、資料提出も求める方針だ。集合時間問題も含め、違反が確認されたら改善を指導することになる。

 天引きや集合時間にかかわる賃金未払いは、日雇い派遣の業界全体で横行しているとされ、厚労省は実態解明を進める。業界大手のフルキャスト(東京都渋谷区)など同業他社でも問題になるとみられる。

 一方、GWGは21日、天引きの2年分を返還するとの発表文を報道機関に配布した。返還を決めたのは「あくまで経営判断」だと説明、天引きは任意で違法性はないとの立場は変わらないという。天引きを廃止した5月1日からさかのぼって2年分に返還を限定した理由は、「賃金請求権の2年の時効を参考にした」とする。具体的な返還方法は7月1日までに派遣労働者に連絡する予定。

 GWGでは、訪問介護最大手のコムスンによる一連の不正行為が問題となっている。グッドウィルでも37億円の特別損失が発生すれば、グループの業績にさらに影響が出かねない。厚労省の調査で法令違反が明確になれば、グループの法令順守体制が一層問題となり、折口雅博会長の経営責任にも発展しそうだ。

 グッドウィルユニオンは天引き問題について「2年分だけ返されても多くのスタッフは納得しない。会社がだまし取った不当利得にあたり、全額返還すべきだ」と集団訴訟も検討しており、厚労省にも徹底した調査を申し入れる。

http://www.asahi.com/life/update/0621/TKY200706210404.html