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2007年06月22日(金) 15時15分

陣内参院議員らに10億円の賠償命令 佐賀商工共済訴訟朝日新聞

 粉飾決算を続けて破産した佐賀商工共済協同組合(佐賀市)から「掛け金」などの払い戻しを受けられなかった元組合員221人が、理事長だった自民党参院議員の陣内孝雄元法相(当選4回)ら当時の役員3人と佐賀県を相手取り、総額約10億3500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、佐賀地裁であった。神山隆一裁判長は陣内氏らについては「粉飾を隠したまま組合員から掛け金を受け入れる方針を決めた」として、県については「監督権限を行使しなかったのは著しく合理性を欠く」としていずれの責任も認め、陣内氏らに請求額の全額、このうち約5億5600万円について県にも支払いを命じた。

 判決には仮執行宣言が付けられており、原告側は判決が確定する前でも陣内氏らの財産を差し押さえられるが、弁護団は「強制的な手段は考えていないが、被告が不誠実な対応をするなら検討する」としている。

 元役員3人のうち陣内氏以外の2人は粉飾決算への関与を認めており、(1)91〜96年に理事長を務めた陣内氏が粉飾決算を認識していたか(2)県が監督権限を行使しなかったのは「行政の裁量」として許されるのか、が争点だった。自民党は判決を懸念して今年5月、参院佐賀県選挙区の公認候補だった陣内氏を全国で唯一、差し替えていた。

 判決は、まず陣内氏の責任について「理事長をしていた94年12月に粉飾決算を知った後、組合の経営推進研究委員会で粉飾を公表しない方針を決めた」と認定。さらに、その後も粉飾決算を続けたうえに、それを隠して組合員から掛け金の受け入れを続ける方針を決めた——などとして民法上の賠償責任を認めた。

 県については「遅くとも96年7月には組合の億単位の債務超過と粉飾決算を把握していた」と指摘。そのうえで、県は「結果的に詐欺的な行為を助長することになり、破綻すれば、被害が拡大することが容易に予測された」のに、中小企業等協同組合法にもとづく組合への監督権限を行使しなかったと認定。「業務改善命令を出さずに放置したのは、著しく合理性を欠く」として国家賠償法上の責任があると結論付けた。

 裁判で陣内氏側は、粉飾決算への関与も経営責任も否定していた。

http://www.asahi.com/national/update/0622/SEB200706220015.html