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2007年06月21日(木) 15時34分

危険隣り合わせ、隊員に増す負担 イラク特措法改正朝日新聞

 改正イラク復興支援特別措置法が20日、成立した。航空自衛隊の輸送業務は2年間、継続可能となったが、空自側は「国の命令に従い、任務をこなすだけ」と冷静に受け止める。だが、1年前からはバグダッドへの乗り入れも始まり、危険と隣り合わせの任務は続く。隊員への負担の増加も懸念される。

 空自のイラク復興支援派遣隊の第11次隊で飛行班長だった小林雅也3佐(52)は、イラク上空でこんな体験をした。

 操縦桿(かん)を握るC130輸送機内で突然、ミサイル警報が鳴り響いた。フレアと呼ばれる火炎弾が撃ち出される。日本での訓練でやったのと同様、ミサイルを回避するための操縦をした。

 「索敵をしながらの飛行中だったが、結局、敵の姿は認識できなかった」。警報装置の作動が、ミサイルを探知するセンサーが何かに反応したためなのか、機器の誤作動だったのか、わからないままだ。

 昨年11月〜今年4月の11次隊も含め、派遣はすでに4度。クウェートからバグダッドなどイラクの計3カ所へ十数回飛んだ。「(警報が鳴る)可能性が常にある。一度、空へ上がったら下りられる保証はない。そんな意識で、すぐに対応できるよう準備しつつ飛ぶ」と小林3佐は心得を語る。

 同じくイラク上空を飛んだ経験を持つ空自幹部は、1度のフライトで警報装置が時には2〜3回も反応したという。「現地の治安状況は当初と変わっていない。そのたびに緊張を強いられた」

 これまでイラクに派遣された空自隊員は延べ2400人。小林3佐のように4回の派遣を経験した隊員は7人、3回でも50人を超える。

 派遣される隊員は、C130を擁する愛知・小牧基地所属の「第1輸送航空隊」が中心だ。経験を求められるC130のパイロットは限られており、急な養成もできず、限られた隊員に任務が集中するのが現状だ。小牧基地経験者を異動で再び戻すなど要員確保を図っているが、負担軽減につながるかは未知数だ。

 バグダッド乗り入れが始まったのは06年7月。現地では爆弾テロが相次ぎ、05年1月には飛び立った英空軍のC130が撃墜されるなど、それまでのイラク南部への輸送と比べ、危険度は高まっている。

 空自幹部は「特定の隊員に負担が集中しないよう精いっぱい考えている。だが(延長が)4年、6年となっていくとちょっとわからない」と話した。

http://www.asahi.com/national/update/0620/TKY200706200406.html