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2007年06月21日(木) 15時49分

取り調べ中「『はい』『うん』以外は言うな」 富山冤罪産経新聞

 富山県警に女性暴行と同未遂事件の容疑者として逮捕され、約2年1カ月服役した後に無実と判明した男性(40)の再審初公判で、弁護側が用意した冒頭陳述の「取り調べ状況」の要旨は次の通り。

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 平成14年4月8日、氷見署は男性を連行。女性暴行未遂事件の犯人との予断・偏見に基づき、午前9時すぎから午後10時ごろまで長時間に及ぶ横暴な取り調べを始めた。同14日、女性暴行事件と同未遂事件の被害者に男性を見せ、被害者から男性が犯人との真実に反する供述調書を作成。同署は同15日、未遂事件の容疑者として男性を逮捕し取り調べを開始した。
 男性は未遂事件に全く身に覚えがなかったことから否認し、兄の自宅に電話をかけていたと捜査官に弁明。しかし捜査官は男性が電話をかけていた可能性が高いことを認識しながら「おまえの家族が『犯人はおまえに違いない。どうにでもしてほしい』と言ってる」「おまえが持っている母親の写真に向かって、自分が犯人ではないと誓えるか」などと言い、男性を「何を言ってもむだ」との絶望的な心境に追い込み、未遂事件の自白を強要した。その結果、同15日、男性は未遂事件を自白させられた。
 男性は同16日、地検高岡支部の弁解録取や高岡簡易裁判所の拘置質問で未遂事件の被疑事実を否認。同17日、弁護士にも否認した。捜査官は、なぜ否認したのかと男性を怒鳴りつけ、今後は「はい」「うん」以外は言うなと言いつけて自白を強要。男性は何を弁明しても通らないと否認を断念した。捜査官は同21日ごろ、男性に、自白内容を今後翻さないことを確約させる内容の上申書を作成させ、同署あてに提出させた。男性は親族からも見放されているとの虚偽の情報で心理的に追いつめられ、捜査官らの言うがままに未遂事件の供述を始めた。
 捜査官は暴行事件も男性に供述を強要。凶器がサバイバルナイフのような刃物やチェーンのようなものだったとの被害者の供述と、男性宅から差し押さえた小刀やビニールひもとの不一致を、男性の供述で糊塗(こと)し、強引に証拠のすり合わせを行った。
 同5月27日、現場の足跡と男性を結び付ける客観的証拠がなく、男性が白い革製の運動靴の処分に関して男性の供述が変遷しているのに、靴に関する供述調書を取り、靴の図面を作成させた。

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