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2007年06月20日(水) 10時03分

「混ぜれば分からぬ」安い肉集め利益追求 偽装ミンチ朝日新聞

 「つぶしてしまえば肉の味などわからない」「どうせ、ばれない」——。食品加工卸会社ミートホープ(北海道苫小牧市)の元幹部は、こう告白した。豚肉を牛肉に見せかけた「偽装ミンチ」は、加ト吉(香川県観音寺市)の子会社などで製品化され、生協などを通じて全国に流通していた。食の信頼に影を落とす事実がまた一つ、明らかになった。

 ミート社の元幹部4人の証言から現場の状況を再現すると——。

 7、8年前ごろ、様々な仕入れ先から、賞味期限ぎりぎりの食肉をできるだけ安く購入し始めたという。「利益を追求した結果だった」と元幹部は証言する。

 それによると、「牛ひき肉に豚肉を混ぜる」「豚や牛の内臓を混ぜる」「豚のひき肉だけを出荷する」といった手法がとられたとされる。

 豚の心臓は赤みが強く、混ぜると牛肉と見分けできない。「混ぜてしまえばわからない」との心理から不正を続行。「本当に牛肉か」との問いは、「あまりにシンプルで問いかけられたことはなかった」という。

 朝日新聞社が、北海道加ト吉製で生協ブランドの「牛肉コロッケ」を鑑定したところ、「豚肉」に陽性反応が出た。検査機関職員は「『豚肉コロッケ』としか呼べない」と言い切った。

 元幹部は「ひき肉業界では、公正さを担保するような流通ができていない」と指摘する。1回に数頭、数十頭に相当する量のミンチを作り出す。「つぶす」「混ぜる」という工程では、不正をする機会はいくらでもあるという。「偽装ミンチ」は、多くは納入先の会社で加工食品となって、市場に流通していった。

 「悪いことをしているのは知っていたのだが……」「良心のかしゃくに耐えられなくなった。消費者には申し訳ない」。不正を告白した元幹部の一人は、こう言ってうなだれた。

 ミート社の田中稔社長は19日、コロッケの鑑定結果を前に、「うちの冷凍庫にはたくさんの肉があり、何かの間違いで牛に豚が混ざったのかもしれない」としながら、「結果的に間違った製品を入れてしまい、申し訳ない。加ト吉にも迷惑をかけることになり、申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と話した。

http://www.asahi.com/national/update/0620/TKY200706200004.html