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2007年06月19日(火) 14時04分

6月19日付 よみうり寸評読売新聞

 〈もののふの矢ばせの舟ははやくとも急がば回れ瀬田の長橋〉——琵琶湖の矢馳と大津の間は、渡し船が速くて便利だが突風が危険だから、遠回りでも瀬田の長橋を渡る方がいい◆これが〈急がば回れ〉の心。急ぐなら危険な近道より遠回りでも安全な道を行け。ゆっくり落ち着いて着実にやるといい◆昭和初期のいろはカルタの絵札には瀬田の唐橋の風景が描かれていた。が、いろはカルタはすたれ、生活のテンポの速くなった昨今では急がば回れを心がけることも、およそすたれた感がある◆急ぐことが欲と道連れならなおのこと。訪問介護大手の「コムスン」と英会話学校最大手「NOVA」のつまずきは互いにそっくり。どちらも業界トップへ急ぎ過ぎた◆コムスンは「トップを名乗りたくて無理な出店ラッシュをかけたのが虚偽申請の始まり」と都の担当者。事業所を増やしたが、ヘルパーは不足。NOVAも全国1000教室を目指し「駅前留学」の拡大を急いだ。教室の増加に教師の数が追いつかない◆拡大志向はあっても、急がば回れなど念頭にない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070619ig05.htm