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2007年06月18日(月) 00時25分

トラブル続発のボンバルディア機 それでも続く導入朝日新聞

 高知空港で胴体着陸事故を起こしたカナダ・ボンバルディア社製DHC8—400型機のトラブルが止まらない。国土交通省によると、今年度に入ってすでに11件と、前年度の30件よりハイペースだ。航空会社は検査員を増やし、部品改良を求めるなど対策に追われている。それでもコストや人員の問題から、同型機の導入が続く。

新たに就航したボンバルディアDHC8—400型の新造機=鹿児島空港で

 「改良型の発電機はいつ届くのか」。今月上旬、国土交通省で開かれたカナダ航空局やボンバルディア社と日本側との対策会議で、日本航空グループの日本エアコミューター(JAC)の担当者は訴えた。発電機の故障で、今年度に入ってすでに3件の引き返しが起きている。「下請けメーカーが改良型部品を製造している」というボ社に「数は十分あるのか」と、鈍い対応に質問が相次いだ。

 国交省によると、このほか気象レーダーや客室ドアなど、前年度同様の個所で今年度もトラブルが続いている。今年3月13日には、前脚が出なくなった全日空機が高知空港で胴体着陸した。事故後、点検を強化したが、対象は安全に直結する重要機器が主体で、「頻発するトラブルは安全には影響ない」と国交省。しかし、トラブルのたびに引き返しや目的地変更が起きている。改良部品への交換がすべて済むまで、ボ社は「まだ1年半かかる」と説明しているという。

 だが、JACは5月、DHC8—400型の新造機を1機受け取った。同社としては10機目。今秋にはさらにもう1機を受け取る予定だ。

 今回の受け取りに当たり、JACはトロントにあるボンバルディア社の工場で、通常は主に受け取り3週間前から派遣する検査員を事故直後から出し、人数も7人と、2人増やした。

 「完成後に点検していたのを、組み立て中からチェックしてきました」と品質検査グループの中川勝也さん(38)は話す。ボ社によると事故後、工場内に世界各地で起きた不具合を知らせる掲示板を置き、問題が分かれば工場内すべての機体を再点検している。

 しかし、工場での品質向上が機体に現れるまでには時間がかかる。高知事故が起きた時、新造機はすでに着陸脚など主要部品の取り付けが終わっていた。頻発している不具合への対策も、大半が間に合わなかった。

 それでも「使い続ける」と、福田耕太郎・整備管理部長は言う。「機種を変更すると、整備士やパイロットなどを最初から養成し直さなければならない」からだ。

 4月、フランス・トゥールーズに本社がある航空機メーカーATR社の幹部が来日した。JACや全日空を訪れ、「我が社の機体はボンバルディアよりも性能がいい」と売り込んだ。

 DHC8—400型のライバルがATR72型だ。航空評論家の青木謙知さんによると、座席数や機体の大きさはほぼ同じで、速度はボンバルディアの方が速く、乗り心地や就航率はATRがわずかに上回るという。

 しかし、日本ではまだ1機も売れていない。ATR72は94年に米国で墜落事故を起こしたのが影響したといわれる。「一度先を越されると巻き返しが大変」とATRの担当者。導入済みの機体の方が部品や情報が手に入りやすく、国の審査にも受かりやすいという。

http://www.asahi.com/business/update/0618/TKY200706170174.html