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2007年06月17日(日) 19時34分

<こんにゃくゼリー>事故相次ぐも、各省は法的措置取れず毎日新聞

 こんにゃくゼリーによる窒息死事故が相次いでいる問題で、消費者団体などから製品の回収や販売禁止を求める声が高まっている。しかし、食品に衛生上の問題がある場合は厚生労働省が回収などを命じるが、食品衛生法には窒息などの事故に関する規定がなく、同省は回収命令などは不可能との立場。農林水産省や経済産業省も同様の理由で強制力ある措置を取れず、制度上の不備が明らかになっている。
 こんにゃくゼリーによる窒息事故は、商品が普及した90年代半ばから発生。国民生活センターによると、95年以降に約40件発生し、6歳以下の乳幼児5人と60歳以上の高齢者3人、40代の女性1人が死亡した。今年3、4月に7歳の男児2人が相次いで窒息死し、改めて関心が高まった。
 対策強化を求める消費者の声に対し、厚労省監視安全課は「食品衛生法で販売禁止や回収を命令できるのは、食品に腐敗や有害物質含有などの問題がある場合だけ。のどに詰まらせるのは、あめや餅と同じで規制の対象外」と説明する。
 食品表示に関するJAS法を所管する農水省は先月下旬以降、全日本菓子協会など関係3団体に再発防止を求める文書を出したが、「処分できるのは品質表示基準に違反したもの」(表示・規格課)と話す。欧州連合は03年、ゼリーへのこんにゃく使用を禁止したが、同省特産振興課は「コンニャクイモから精粉したグルコマンナンは欧州では食品添加物扱いなので規制できるが、日本ではこんにゃくの原材料として使われているため禁止できない」としている。
 消費生活用製品安全法を担う経産省も「食品は農水省や厚労省の分野」と所管外を強調する。
 こうした状況を主婦連合会(兵頭美代子会長)は「今回の事故はこの間の行政・業界・企業の取り組みが全く効果のない対症療法的な措置だったことを示している」と批判。食品、日用品などの種類を問わず、すべての消費生活用品を対象とする強制的リコール制度の導入▽官庁や業界の枠を超え一元的に事故防止策を講じる「事故防止センター」の設立——などを求める要望書を、安倍晋三首相や柳沢伯夫厚労相らに提出した。
 3月に学童保育のおやつでこんにゃくゼリーを食べ窒息死した三重県伊勢市、村田龍之介君(当時7歳)の母由佳さんは「(こんにゃくゼリーが)10年前になくなっていれば息子の事故はなかった。命を危険にさらす商品はなくなってほしい」と訴えている。【望月麻紀】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070617-00000033-mai-soci