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2007年06月16日(土) 01時34分

NOVA処分 「駅前留学」が重ねた嘘と不正(6月16日付・読売社説)読売新聞

 組織ぐるみの悪質な違反である。一部業務の停止処分は当然だ。行政の対応は、遅すぎたのではないか。

 経済産業省は、英会話学校最大手のNOVAに、1年超の長期コースの新規契約の勧誘など、一部業務の6か月間停止を命令した。東京都も都条例に基づき、改善を勧告した。

 消費者とのトラブルが起きやすい取引のルールを定めた特定商取引法の違反行為が、18項目に及んでいたからだ。

 違反は、レッスンの勧誘時に、「予約は好きなときにできる」などと嘘(うそ)の説明をした「不実告知」のほか、「書面記載不備」「誇大広告」などだ。

 中途解約の際、返還すべき金額を過小に精算したり、契約後の一定期間は、解約に応じなければならないクーリングオフに、応じていない事例もあった。

 不正の多さにあきれる。しかも、本社がマニュアルや通達で、現場に違反を指示していた。法令順守(コンプライアンス)の意識を全く欠いている。

 NOVAは、「駅前留学」や「お茶の間留学」などの宣伝で知名度を高め、急成長した。全国で教室数は約900、生徒数が約42万人の業界首位である。

 だが、規模に比べて講師数が少なく、受講生とのトラブルが急増中だ。「全国1000教室」を目指した拡大志向がゆがみを生み、違反に走ったのだろう。

 各地で受講料の返還訴訟が起き、中途解約金返還をめぐる1件では、最高裁で4月に会社敗訴が確定した。

 NOVAは再発防止策を取り、法令順守を徹底しなければならない。処分対象外だった既契約のレッスンは続け、受講生の不安を解消することも大事だ。

 NOVAの違反を長期間、放置してきた行政の責任も重い。

 都は02年、NOVAに「不実告知」などで行政指導した。いったん改善されたが、その後、逆に違反は増え続けた。だが、経産省と都が立ち入り検査したのは、今年2月になってからだった。

 こうした対応の遅れが不正を野放しにし、被害を拡大させた。国、都道府県、国民生活センターなどが情報交換し、違反を早期に是正させるべきだった。

 都はNOVAに対し、27日までに改善報告書の提出を求めた。経産省は、今後2年間、四半期ごとに寄せられた苦情と対応策を同社に報告させる。

 行政は、NOVAの改善策を厳しくチェックし、改善が不十分なら、刑事告発を含め、特商法に基づく罰則の適用をためらうべきでない。消費者保護をさらに徹底するため、特商法の罰則強化などの検討も急ぐ必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070615ig91.htm