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2007年06月16日(土) 16時03分

コムスン強引商法、ケア責任者やヘルパーらの証言続々読売新聞

 介護事業所指定の虚偽申請などが発覚した「コムスン」の親会社「グッドウィル・グループ」(東京都港区)は、介護事業からの全面撤退に追い込まれた。

 厚生労働省からコムスンの行政処分が発表されて10日。この間、同社のケアセンター(介護事業所)の責任者やヘルパーからは、営業マンさながらのノルマや、不正のからくりについての証言が相次いでいる。介護を金もうけの道具にしようとした“コムスン商法”の実像は——。

 ◆ノルマ◆

 「本社から毎日のように電話がかかってきて、売り上げを伸ばすよう責められた」。東北地方の事業所でセンター長をしていた女性は、厳しいノルマの実態をこう打ち明ける。

 各事業所に課せられていたノルマは「純増4」。新規の利用者を毎月4人以上獲得することだ。

 顧客の新規開拓のため、月100軒の訪問も求められた。訪問先との一問一答は、本社に報告しなければならない。会議などでは、「赤字は罪悪だ」「赤字の事業所は、トイレの水も流せないはず」と、たびたび言い聞かされてきた。

 昨年夏以降には顧客数の増加だけでなく、実入りの多いサービスを利用させるよう求められるようになった。コムスンに入る報酬によってポイントを設定し、月8ポイント以上の新規開拓を義務づけられる。九州の事業所でヘルパーだった女性は、「ポイントなんて、スーパーの買い物みたい。人を人とも思わないやり方と感じた」と疑問を投げかけた。

 ◆架空請求◆

 厳しいノルマに悩まされた現場は、介護報酬の水増し請求に手を染めるようになる。西日本の事業所の担当者は、「症状の悪化を防ぐための予防介護のサービスでは、特に架空請求が多かった」と認める。

 介護報酬の請求書は、事業所ごとに介護サービスの予定表と実施記録を突き合わせて、パソコンで作成する。この事業所では「○日○時から90分」と予定を組んであれば、キャンセルされても、行ったことにして請求していたという。

 ノルマを果たせず、知り合いの名前を勝手に使って新規の契約を結んだように装ったセンター長も。利用者の負担分は、自腹を切った。センター長の退職や異動で支払いが滞って、相手に請求書が送られ、トラブルになったケースもある。

 東北地方の事業所では、口座引き落としで支払っていた一部の利用者に対しても、請求書を送付していたという。この事業所の担当者は「『いくらなんでも二重請求はまずいのでは』と上司に話したが、聞き入れられなかった」と話した。

 ◆取り立て◆

 「人を助けようと思って介護福祉士になったのに、未払いのサービス利用料の取り立てまでやらされたのがつらかった」。ヘルパーらは、こう口をそろえる。

 本社からは「サービスを提供したら、払うべきものは支払ってもらうのは当然」と厳しく言われ、亡くなった利用者の遺族の元に、何度も通わされたヘルパーもいた。

 コムスンでは、滞納している利用者への通知などの業務を債権回収業者に代行させていたが、こうした実態を、「まるで消費者金融のようだった」という関係者は多い。

 都内にあるグループ傘下の有料老人ホームで施設長をしていた男性は、「人を金を払わせる相手としか見ていないから、利用者にも従業員にも受け入れられなかった。人を軽視する会社に介護ができるはずない」と苦々しそうに話した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070616i3w7.htm