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2007年06月13日(水) 07時38分

朝鮮総連、本部売却は訴訟対抗策 明け渡し回避狙う朝日新聞

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が、東京都千代田区の「朝鮮中央会館」の土地建物を売却したのは、整理回収機構から債務返済を迫られている朝鮮総連が、シンボル的存在の同建物の明け渡しを阻止する意図だったことが、関係者の話でわかった。返済に向けての和解協議が合意に達せず、18日に予定される東京地裁の判決で朝鮮総連側が敗訴した場合、仮執行により明け渡しを求められる事態に対抗するのが目的という。

土地と建物が売却されていた朝鮮中央会館=東京都千代田区富士見2丁目で、本社ヘリから

 売却されたのは、地上10階地下2階建ての同会館と敷地2390平方メートル。取得した会社「ハーベスト投資顧問」は今回の売買の受け皿として用意された会社で、資金の実際の提供者は別にいるとみられるが、明らかにされていない。

 朝鮮総連は、破綻(はたん)した朝銀信用組合から不良債権を引き継いだ整理回収機構から628億円の返還を求める訴訟を、05年に起こされている。総連側代理人は訴状どおり債務を認め、和解協議が進められてきた。

 総連側は40億円程度を分割払いし、残額は別途処理方法を講ずると提案。機構側は最初の3年間は5億円ずつ、4年目の年末に残り612億円や遅延損害金を一括返済するとの案を示した。歩み寄りは困難で、総連側が敗訴した場合、同会館を明け渡さざるを得なくなることは必至だった。

 このため総連側は、資金提供者を見つけたうえで、入居を続けることを前提に5月末、ハーベストに所有権を移転。土地建物の時価にあたる30億〜40億円を機構側に提供することで、明け渡し回避を狙ったとみられる。

 ハーベストは06年9月の設立後、今年4月、公安調査庁長官や広島高検検事長を歴任した緒方重威(しげたけ)氏が代表取締役に就任した。在日朝鮮人問題に詳しい弁護士は「整理回収機構は検察の影響力が強い組織。返済交渉をまとめるため、総連側が大物検察OBに助力を仰いだのでは」と推測する。

 総連は、朝銀信用組合の不良債権をめぐり各地で資産の処分を迫られる中、中央会館は「日朝国交正常化後には北朝鮮の大使館となるべき建物」などとして維持を望んだとみられる。

 金融法務に詳しい今井和男弁護士は「整理回収機構側は不当に安い値段での売買ならばこれを認めず、強制執行にかけるだろうが、競売には手間ひまがかかる。任意売却のメリットが大きいなら、今回の売買を認める選択肢もあり得る」とみる。

http://www.asahi.com/national/update/0612/TKY200706120388.html