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2007年06月13日(水) 16時23分

警視庁の情報1万件が流出…巡査長PCウィニー感染で読売新聞

 警視庁は13日、同庁北沢署地域課の男性巡査長(26)の私物パソコンから、捜査資料など約1万件の文書類や画像がインターネット上に流出したと発表した。

 問題のパソコンはファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」のウイルスに感染していたとみられ、供述調書や被害者の実名が入った強制わいせつ事件の告訴状とみられる文書など捜査対象者の個人情報も大量に流出している。警察庁では今年3月、全国の警察官の私物パソコンについてウィニーの有無を点検するよう指示し、警視庁も全職員を対象に調査を実施したが、この巡査長は「ウィニーはない」と虚偽の報告をしており、調査の不完全さも明らかになった。

 警視庁によると、12日午前8時ごろ、ネットの掲示板に「警察情報が流出している」との書き込みがあったため、調べた結果、同日夜になって、該当する文書約9000件と画像約1000件の流出が確認された。文書は、少年事件の捜査資料や、カジノとばくに関する捜査報告書や供述調書、捜査対象者の銀行口座の分析資料など。

 文書には巡査長の経歴書が含まれていたことから、同庁は流出元を巡査長と特定。13日朝から事情を聞いたところ、巡査長は「同僚からもらったデータをパソコンに取り込んでいた」と話した。巡査長の私有パソコン2台のうち1台にウィニーがインストールされていたことが判明。遅くとも今年4月にはウイルスに感染していたとみられる。

 流出したデータは、同じ地域課の上司の巡査部長(32)がパソコンの外付けのハードディスクに保存しており、巡査長はこのハードディスクを借りたことがあった。この巡査部長は以前、警視庁組織犯罪対策1課などに所属しており、外国人犯罪に関する捜査情報なども流出した可能性もある。

 北村博文・同庁警務部参事官の話「このような事案が発生したことは誠に遺憾。今後、厳正に対処したい」

少年事件や口座情報も

 またインターネット上に捜査情報が流出した。警視庁巡査長の私物パソコンから流出した、少年事件などの膨大な捜査資料。この中には銀行口座関係資料など重大な個人情報も含まれていた。相次ぐ流出トラブルを受け、警察庁は今年3月、「Winny(ウィニー)」がインストールされた私物パソコンの使用禁止や捜査情報の無断持ち出し禁止を徹底する通達を出したばかり。警察の情報管理の余りのずさんさに、改めて批判が集まりそうだ。

 新たに発覚したのは、警視庁北沢署の巡査長が個人パソコンに保管していた捜査情報など。やはり、ルールを破ってウィニーをインストールしていた。

 流出が実際に起きたのは今年4月ごろとみられる。現在、問題の文書類はウィニーのほか、別のファイル交換ソフトでもダウンロードできる状態になっており、流出は広範囲に及んでいるとみられる。

 ウィニーを介して捜査情報が流出した例としては、2006年3月、岡山県警倉敷署の巡査長の私物パソコンから、約1500人分の犯罪被害者や容疑者の住所、氏名など個人情報が流出。さらに同月、愛媛県警捜査1課の警部のパソコンから、容疑者の供述調書などの捜査資料や約4400人分の被害者、捜査協力者などの個人情報が流出し、大きな問題となった。

 今年に入っても、2月に山梨県警の巡査のパソコンから、婦女暴行事件の被害者ら500人以上の犯罪被害者の個人情報を含む捜査資料が流出するなど、流出が止まらない。

 事態を重く見た警察庁はこの直後の3月、「情報セキュリティー対策の徹底」を全国の警察本部に通達。公務で使用するパソコンや外部記録媒体の許可なしでの持ち出し禁止や、ウィニーなどのソフトが入った私有パソコンの使用禁止を指示した。

 だが、通達後も北海道警の巡査長のパソコンから560人分の流出が発覚するなど、情報管理のずさんな実態が次々と明らかになっていた。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/ryusyutsu/20070613nt0d.htm