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2007年06月09日(土) 00時00分

(10)出会い系「巡回」 注意喚起読売新聞


出会い系サイトを“巡回”し、注意メールを送るサイバーボランティアの松浦さん。ノートには書き出したアドレスがぎっしり

 教育関係者がボランティアで奮闘する。

 右手に鉛筆、左手にマウス。神奈川県に住むサイバーボランティアの松浦真紀子さん(62)は自宅のパソコンで、出会い系サイトを次々とのぞいては、未成年の少女と思われる書き込みを探す。

 「中2です。お小遣いに困っています」といった文面を見つけると、メールアドレスをノートに控える。その後、全国少年警察ボランティア協会のサイトから「18歳未満の青少年が出会い系サイトを利用した結果、強姦(ごうかん)等の凶悪な犯罪に巻き込まれる事件が数多く発生しています——」という注意喚起のメールを送る。サイト管理者にも同様のメールで警告する。

 パソコンの前に座るのは2日に1度。数時間かけて“巡回”し、送るメールは20通以上になる。5月は324件出した。ボランティアを始めた3年前は、ノートに書き出せば、以前も出てきたアドレスに気づいたが、「最近は多すぎてほとんどわからなくなった」。

 反応は、あっても月に1回程度だ。「いたずらはやめて下さい」という返事が来たことも。「やめたいと思ったこともあるが、『ごめんなさい、もうしません』と反省のメールが来ることもある。迷いや罪悪感を感じている子を一人でも引き留められればうれしい」

 ただ、反省のメールが来ても直接の対応はしない。警告文は、どのボランティアも一律だ。「個人的に対応することの危険や手間がある。未成年者の書き込みを探し出すことで手いっぱい」(協会事務局)

 松浦さんは約20年、自宅で学習塾を開き、子供たちの悩み相談にものってきた。補導員は今も現役で、26年の経験を持つ。それだけに、ネットの落とし穴にはまってしまう子供を見過ごせない。街頭での補導なら、子供と向き合って話ができるが、ネットで受け流されてしまうことに「歯がゆさを感じる」。

 最近は、タイトルだけではわからない出会い系サイトもあり、読むにはID取得が必要になるなど、巧妙化してきた。「そもそも金を出して未成年者を買う大人がいることが問題。言葉巧みに少女を誘う男性への対策を考えて」と訴える。

 「親や教師、行政関係者らが連携を」と呼びかけるのは、「ネット社会と子どもたち協議会」(事務局・東京都稲城市)の渡部陽子代表(70)だ。元公立中学校の校長。2004年6月に長崎県佐世保市で起きた小学校6年生女児による同級生殺害事件が協議会設立のきっかけになった。危機感を募らせた関係者が、3か月後に会員約300人で発足させた。

 会のホームページでは、ネットとつきあうための情報を掲載、トラブル回避や子育ての知恵を盛り込んだ約230ものサイトを紹介している。また、会員が手弁当で小中高校に出向き、ネットとの上手なかかわり方を教えている。

 「匿名性の陰で他人を傷つける行動は大人社会のマネ。根本的な対策を考えなければ」と渡部さん。

 問題の根源は大人の側にある。(吉田典之、松本美奈)

サイバーボランティア 全国少年警察ボランティア協会(全国少年補導員協会が4月から名称変更)が、全国の少年補導員や少年指導員113人に委託している。警告メール発信のほか、インターネットを通じた少年相談も行っている。問い合わせは(電)03・3239・4970。ネット社会と子どもたち協議会はhttp://net-society.org/index.html

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20070609nt01.htm