記事登録
2007年06月08日(金) 15時02分

<職務上請求書>土地家屋調査士が偽造 女性情報を不正取得毎日新聞

 埼玉県の土地家屋調査士の男性(76)が昨年12月、「職務上請求書」に虚偽の記載をし、同県内の女性行政書士の戸籍謄本や住民票の写しを不正に取得していたことが分かった。個人情報を取得できる職務上請求書を巡って、その悪用を禁止する法改正が国会で進められているさなかで不正が行われた。男性は毎日新聞の取材に「やってはいけないことだった」と不正を認めている。
 男性は57年に土地家屋調査士登録。行政書士資格も持ち、先月までは同県行政書士会相談役を務め、01〜03年は同会副会長だった。女性は同会の支部幹部。
 関係者によると、男性は06年12月、同県吉見町役場と狭山市役所に職務上請求書計3通を提出し、戸籍謄本や住民票の写しの交付を申請。同県内の女性の本籍地などの情報を取得した。職務上請求書は、埼玉土地家屋調査士会から購入したもので、使用目的欄には「登記」と記載していた。
 情報の流出を疑った女性が町と市に情報公開請求したところ、委任していないのに男性が戸籍謄本などの交付を申請していたことが判明。女性は今年2月、土地家屋調査士を所管するさいたま地方法務局に男性の懲戒を申し立てた。
 埼玉土地家屋調査士会綱紀委員会は、既に男性から事情聴取。男性は取材に「女性は行政書士会支部の幹部にふさわしくないとの指摘があり、個人情報を調べた」などと話している。
 土地家屋調査士などの有資格者だけに使用が認められている「職務上請求書」を巡っては、05年に兵庫県や大阪府などで不正請求の発覚が相次いだ。これを受け、請求理由の明示や罰則強化などを盛り込んだ改正戸籍法・住民基本台帳法が今国会で成立した。
 改正の動きに合わせ、各資格者団体などが請求書取り扱いの注意を呼び掛ける中で、今回の不正は行われた。
 同県内のある行政書士は「余りに安易に請求が行われている。請求理由を明示する法改正だけでは不十分で、委任状添付の義務付けなどが必要」と話す。埼玉土地家屋調査士会の宮田精一会長は「綱紀委員会で事実関係を確認中。今後、注意勧告理事会を開き対応を協議する」としている。
 法務省によると、06年5月までの3年間で弁護士2人▽行政書士6人▽司法書士2人が職務上請求書を悪用して戸籍謄本を不正取得したことが発覚している。【加藤隆寛】
 【職務上請求書】 弁護士や行政書士など「8士業」の専門家のみが使用できる。委任状なしで、第三者の戸籍謄本や住民票の写しの取得が可能。「使用目的、提出先」の記載欄はあるが「相続、裁判所」などと簡単に書かれることが多く、自治体の窓口では詳しく追及されないのが実態。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070608-00000059-mai-soci