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2007年06月07日(木) 08時01分

グッドウィル、コムスン事業譲渡 したたか「退場逃れ」産経新聞

 ■利用者保護優先、逆手に

 訪問介護大手、コムスンの事業所への新規指定・更新を認めないとした厚生労働省が、コムスンの全事業を同じグッドウィル・グループ傘下の介護サービス会社、日本シルバーサービス(NSS、東京都目黒区)への譲渡を認めたのは、約6万5000人に及ぶコムスン利用者へのサービス継続に配慮したためだ。だが、行政の配慮を逆手に成長性のある事業からの撤退を免れた手法は、“検査逃れ”に通じるしたたかな企業体質をみせつけたといえそうだ。

 今回の事業譲渡についてコムスンは「7万人近い顧客が不利益を被らないための措置」(広報室)と強調した。24時間介護など独自のサービスを必要とする利用者は多く、同業他社のサービスを受けるのが困難な地域もあり、「利用者の間に広がる不安を払拭(ふっしょく)させたかった」(同)という。

 事業譲渡に伴いNSSは新たに指定申請を行うことになるが、厚労省は「認めざるをえない」(老健局)状況にある。行政は悪質事業者を排除しつつ、利用者保護も優先しなければならない。

 一方、グッドウィルは経営面の打撃を最小限に抑えられそうだ。人材派遣と介護事業を経営の2本柱とする同社は、昨年10月に人材派遣大手のクリスタル(現グッドウィル・プレミア)を買収したことで人材サービスの比重を高めた。

 それでも、関係者の間では「介護保険法改正の影響で一時的に停滞しているが、介護ビジネスは成長産業」との見方が強い。グッドウィルはグループ内の事業譲渡で介護事業消滅の危機を脱し、社会的非難をかわして再起する可能性がある。

 6日の株式市場では、業績の先行き不安の高まりで大量の売り注文が殺到し、値幅制限の下限となる前日比1万円安の7万1800円とストップ安だった。だが、事業譲渡の方針決定は株価に微妙な影響を与える。

 グッドウィルの折口正博会長兼最高経営責任者(CEO)は、日本初の24時間365日体制の老人介護サービス進出にあたって社会的責任や公益性を語らず、「ビジネスチャンス」と公言した経営者だ。そのしたたかさを市場はどう評価するのかが、注目される。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070607-00000010-san-bus_all