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2007年06月07日(木) 10時00分

コムスン 現場任せ「ずさん」 ヘルパー体調不良相次ぐ毎日新聞

 度重なる虚偽申請とずさんな体制。6日、1600以上の事業所の順次廃止に踏み切った厚生労働省は「コムスン」(東京都港区)のそんな実態を重視した。「24時間在宅介護」を掲げ、六本木ヒルズに本社を構えるまでに成長した業界最大手企業。約6万人の利用者は戸惑い、約2万4000人の従業員も不安そうな表情を見せた。
 「(申請書に)名前が書いてある職員が当初からいなかった」。同日午後、正式発表した厚労省の担当者は、虚偽申請を厳しく批判した。
 不正が発覚した後の対処も悪かった。4月、東京都が介護報酬の不正請求を行った3事業所の指定取り消し処分を決めると、コムスンは直前に事業所廃止を届け出た。処分しようにも対象の事業所を消滅させる。都の担当者は「悪質な処分逃れで目に余る不正」と怒りを隠さなかった。
 利用者の不安は全国に広がる。
 05年、コムスンに訪問介護事業を全面委託した北海道利尻富士町(利尻島)。担当者は「突然のことで対応は白紙。コムスンからの説明はない」と戸惑う。
 利尻島は北海道北部の日本海に浮かぶ小島。同町の人口は約3000人でうち34%を高齢者(65歳以上)が占め、約20人が食事や入浴などの介護を受けている。元々は地元の社会福祉協議会が事業を行ってきたが赤字だったため、05年12月に委託した。町の財政負担は軽減され、利用者の評判も良かったという。
 92歳の母親を在宅介護する大阪府豊中市の女性(64)は、約5カ月前からコムスンの訪問介護サービスを利用。「ヘルパーは時間通りに来るし、ケアも完ぺきで問題ない。重度の高齢者に派遣してくれる事業者は少ない。これからどうなるか、とても不安だ」と話した。
 一方、過酷な労働実態を証言する声も。「ヘルパーが相次いで体調を崩し、無理な夜勤が続いた。24時間在宅介護は、すべて現場任せでうまくいっていなかった」。過労で体調を崩し、コムスンを辞めた東京都内の元職員男性(37)は振り返る。ただ「研修は零細の事業所よりはしっかりやっていた」とも言い「制度がころころ変わり、利益を上げて経営を安定させるのは難しい。そのひずみが出たのだと思う」と複雑な表情も見せた。
 コムスンの事業所では、スタッフが一様に「状況が分からない」と困惑した表情を見せた。都内の女性スタッフは「本社は『状況が分かり次第連絡する』と言うだけ」と不安そうだった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070607-00000002-maip-soci