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2007年06月05日(火) 14時34分

天然に程遠い精製「はちみつ」、原料表示に養蜂家ら疑問符読売新聞

 「精製はちみつ」って、はちみつ? 天然のはちみつを加工して作る「精製はちみつ」の表示方法を巡り、消費者や養蜂(ようほう)家から疑問の声が上がっている。

 清涼飲料水や菓子の材料として使う場合、単に「はちみつ」と表示するのが国内では一般的だが、加工の過程で、天然のものに含まれているミネラルなどの成分が取り除かれているためだ。「純粋はちみつ」に人工甘味料の混入疑惑が指摘されるはちみつ業界で、もう一つの表示論議が浮上してきた。(高梨ゆき子)

 〈果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、酸味料、香料……〉

 はちみつ入りをうたい文句にした大手メーカーの清涼飲料水には、原材料表示欄にこんな記載がある。しかし、「はちみつ」と書かれた実際の原料は、天然のはちみつを加熱するなどして、色やにおいを取り除いた「精製はちみつ」だ。

 原料として使いやすくするための加工の過程で、たんぱく質やミネラルなど、多くの人がはちみつと聞いて思い浮かべる栄養分もかなりの量が失われている。

 しかし、菓子類などに使われる場合も含め、原料表示は「はちみつ」。公正取引委員会が認定したはちみつの定義は、「みつばちが巣に蓄え、熟成した甘味物質」だが、大手メーカーは「こうした定義は加工食品には適用されないと考え、原材料表示としては最も一般的な名称を使っている」と話す。

 これに対し、食品コンサルタントの磯部晶策さんは、「はちみつについて、多くの消費者は、ハチが採集した自然のままの食品だと受け止めている」と指摘。「単に『はちみつ』と表示するのは誤解を生む」と訴える。

 花畑にハチを放し、こつこつと天然はちみつを集めている養蜂家からも、中国などからの輸入品を加工した精製はちみつに、天然品と同じ表示が許されることには反発が出ている。東北地方の養蜂家は「本来のはちみつとかけ離れたものが、同じ表現になるのは納得できない」と話した。

 「精製はちみつ」について、社団法人「全国はちみつ公正取引協議会」では、純粋な「はちみつ」と並ぶ「はちみつ類」の中に分類している。従来「脱色脱臭はちみつ」としてきたものを、2002年に「精製はちみつ」に変更、公正取引委員会の承認を受けた。

 しかし、国際的にはこうした分類は例外的だ。食品規格を定める国際機関「コーデックス委員会」(事務局・ローマ)では、精製はちみつに当たるものを、はちみつと認めていない。

 同協議会は「加工食品で原材料をどう表示するかの判断はメーカーにゆだねられている。ただ、精製はちみつをはちみつ類に含めるのが妥当かどうかについては、以前から議論があり、現在、再検討している」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070605it05.htm?from=top