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2007年06月05日(火) 20時20分

<年金特措法>不明記録問題で初日から荒れ模様 参院厚労委毎日新聞

 年金時効停止特別措置法案の審議が始まった5日の参院厚生労働委員会は、基礎年金番号に統合されず宙に浮く納付記録5000万件を1年で照合する、と政府が前日に表明したのを受け、「本当にできるのか」が最大の論点となった。可能と言う政府・与党に野党は異を唱え、審議は初日から荒れ模様となった。
 「10カ月で146万件なのに、5000万件を12カ月でという。これでは計算が合わない」。5日の同委員会で、足立信也氏(民主)は政府方針の記録照合ペースに疑問を示した。
 社会保険庁はこれまでも宙に浮く記録の統合を進めている。昨年6月に5095万件あった未統合記録は、10カ月後の今年4月には4949万件となり、146万件減った。足立氏が指摘したのはこの数字で、1日4866件のペースだった。
 一方、政府の言う照合は、同一人のものと想定される記録を束ねる「名寄せ」を指し、記録統合件数とは単純比較できない。それでも1年で4949万件を名寄せするには1日13万7472件、1時間で5728件を処理する必要がある。06年度の28倍だ。
 97年の基礎年金番号導入時、未統合記録は2億件あった。つまり10年で1億5000万件しか減っていない。この点も踏まえ、野党は「1年では無理」と主張する。これに対し、社保庁幹部は「ソフトを導入すれば1年で可能。専門家にも確認した」と言う。
 「(記録入力機の)キータッチは1日5000回以内」。西島英利氏(自民)は5日、こうした社保庁当局と労働組合が83年に交わした旧覚書を手に登壇し、「慣れた人なら5000回のタッチに1時間かからない。これで統合が進むはずはなかった」と指摘した。これまで統合が進まなかったのは野党支持の労組の怠慢によるもので、今後は違う——というわけだ。これに対し、野党席からはヤジが飛んだ。
 野党は5000万件の中に、生年月日が不明の30万件のほか、氏名の誤入力や欠落など照合困難な記録が大量に残っているとみる。5日、データが欠落した記録の件数を問われた社保庁は「集計するシステムがない」と答弁したが、足立氏は「それでは統合しようがない」と切り込み、小池晃氏(共産)も「5000万件は名寄せができなかった記録の集まり。1年でできるわけがない」と指摘した。
 こうした政府の対応に、与党内にも「1時間に5700件も処理できるのか」(自民党幹部)「急げば照合の過程でミスが起きる」(公明党中堅)といった不安の声が出ている。【吉田啓志】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070605-00000097-mai-pol