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2007年06月03日(日) 13時01分

ニュースワイド2007:絶えぬリフォーム詐欺 /北海道毎日新聞

 ◇高齢者の心理突き、手口も一層悪質化
 主に高齢者を狙った住宅リフォーム詐欺事件が、依然として絶えない。道警が05年から今年3月末までに検挙したリフォーム業者は8件、被害額は計約16億円。このうち、今年1〜3月は4件、6億円にのぼる。背景には、複数の人物による役割分担や、高齢者の心理を巧みに突いたセールストークなど手口の一層の悪質化がうかがえる。一方で、地域住民が高齢者を見守り、被害を防ぐための取り組みも芽生え始めた。道内の被害実態と対策の現状を探った。【久野華代】
 ■「ウソ」で契約
 「水が漏れている。直さないと床下に流れてしまう」
 06年12月7日、札幌市清田区のリフォーム会社「北日本ホームクリエイト」の社員らが、同市豊平区の無職女性(80)宅を訪れた。社員らは排水管をわざと壊し、約80万円の工事請負契約を結んだとして、詐欺未遂などの疑いで札幌豊平署に逮捕された。女性はリフォーム代金として、7回にわたり計約560万円を支払わされたという。
 同社による被害者は約4000人に上り、被害者の平均年齢は74歳。
 リフォーム会社「エスアイテック」を名乗る西区の男らは06年11月、白石区の女性(75)宅を訪れ、「屋根裏の支えが曲がっている」とウソを言い、補強工事の契約を取り付け現金約230万円をだまし取ったとして、札幌手稲署に詐欺容疑などで逮捕された。男は主に築20〜30年の家に住む一人暮らしや夫婦2人暮らしを狙ったという。同署幹部は「屋根裏や床下の工事が狙われるのは、高齢者が自分の目で確認できないから」と話す。
 ■不安を増幅
 道警によると、悪質リフォーム業者は、少額の工事や点検の契約を取り付ける「アポ」、前回の工事の点検などと称し床下や天井裏にもぐり込み、「修理が必要だ」などとウソを言い高額な工事契約を結ばせる「クローザー」、施工業者と役割を分担して高齢者を狙う。
 また、リフォーム詐欺被害者宅の玄関扉などに、シールやペンで書かれた印などが確認された。これらの印は、訪問販売でだまされやすい高齢者宅を示す目印とみられている。
 道立消費生活センターに寄せられた訪問販売による住宅リフォーム契約についての相談件数(01〜06年度)は計684件。このうち60歳以上の高齢者が約7割を占める。高齢者心理に詳しい北星学園大の米本秀仁教授(高齢者福祉論)は、「高齢者は健康面や経済面に不安をもともと抱えている。訪問した業者に『放っておいたらもっと悪くなる』と言われると、不安が増幅されて契約を断れなくなってしまう」と分析する。
 ◇見守り合いで被害防止の取り組みも
 悪質業者に関する情報はこれまでは、消費者センターに個別に寄せられていたため、市町村単位では他の地域の情報をほとんど把握できなかった。
 こうした中、道立消費生活センターは03年12月、道や道警、道社会福祉協議会などに呼び掛け「消費者被害防止ネットワーク」を結成。市町村役場などに相談窓口を設け、被害の早期把握と情報共有に努めている。ネットは今年3月末現在、1支庁26市町に設立された。道社協の原正己地域福祉課長は「近くで悪質業者が活動しているという情報があれば、警戒できるようになった」と話す。
 北日本ホームクリエイト社の事件は、同社の車が被害者宅に毎年来ていることを不審に思った近所の人が、札幌豊平署に通報したことで発覚した。地域住民の「見守り合い」によって、被害の拡大防止に結びついたケースだ。道立消費生活センターは「高齢者は周囲が見守り、声を掛けることが必要。ネットワークを充実させ、悪質商法に毅然(きぜん)と対応する姿勢を示したい」と話している。
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 ◇被害に遭わないために−−1級建築士・中山峰生さんに聞く
 道警の依頼でリフォーム詐欺被害に遭った住宅の調査・鑑定を行っている札幌市白石区の1級建築士、中山峰生(みねいく)さん(49)に、消費者の心構えを聞いた。
     ◇
 調査した住宅は、補強や修理の用を足さないものがほとんどだった。工事に使われた部品は、1本1300円程度の「床束(ゆかつか)」など、ホームセンターで誰でも買えるものばかりだった。
 悪質業者に狙われたのは、築年数が経過しているが、壁を塗り替えているなど手をかけた家が多かった。業者は「古い家を大事にしたい」という思いにつけ込むのかもしれない。
 被害を防ぐためには(1)その場で契約せず2社以上から見積もりを取る(2)点検を依頼する段階で「他社からも見積書を取り、一番安い会社と契約する」と告げる(3)見積書の内容が分からなければ消費者センターに相談する——などに気をつけてほしい。(談)
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 中山さんは「欠陥住宅被害全国連絡協議会北海道ネット」で、リフォーム被害に関する相談を受け付けている。問い合わせは同ネット(011・281・8449)。

6月3日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070603-00000090-mailo-hok