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2007年06月02日(土) 03時04分

盗掘古美術品の海外流出、伊検察側が滋賀の美術館名指し読売新聞

 【ローマ=松浦一樹】イタリアで盗掘された古美術品が国外に流出した事件で、米国への流出にからむ公判に出席した伊検察側の鑑定人は1日、「日本の美術館も盗掘品を所蔵している」と具体名を挙げて指摘した。

 公判で具体名が明らかにされたことで、伊検察による日本ルートの捜査が本格化するものとみられる。

 公判で名指しされた日本の美術館は、滋賀県甲賀市の「MIHO MUSEUM」。米ゲッティ美術館(ロサンゼルス)への流出経路を調査している検察側鑑定家が証言し、「米国以外の各国美術館にも盗掘品が広く流出している実態」として明らかにした。

 この鑑定家によると、MIHO MUSEUMが所蔵する大理石の装飾彫刻「オッシラ」(ローマ出土)などは、伊捜査当局が密輸シンジケートから押収した盗掘品写真の中から「同一品が見つかっている」という。伊検察当局は1990年代半ばから、古代ローマなどの遺跡で盗掘された古美術品を日米などの美術館に売りさばいた密輸シンジケートの捜査を進め、米ルートを摘発。ゲッティ美術館は、スイス拠点のシンジケートから多数の古美術品を入手したとされ、シンジケートに協力した学芸員と米古美術商が密輸などの罪に問われ、ローマ刑事裁判所で審理が続いている。

 伊検察当局は、シンジケートの日本との取引に邦人古美術商が関与していたことも突き止めており、捜査関係者によると、現在、押収写真を日本の「複数の美術館」の所蔵品と照合する作業を急いでいるという。

 MIHO MUSEUMの辻惟雄(のぶお)館長は本紙の取材に対し、「当館所蔵品については法的に問題はないものと承知している。ただ、イタリア政府から正式な返還要請があれば、対応を検討する」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070602i301.htm