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2007年06月01日(金) 23時59分

年金不安、窓口混雑 HPも接続困難に朝日新聞

 「宙に浮いた年金」問題で国会が混乱するなか、自分の年金記録を心配する人たちが相談窓口に続々と押し寄せている。年金時効特例法案が未明に衆院を通過した1日も、各地の社会保険事務所は大混雑。電話は鳴りっぱなしで、記録確認のための社会保険庁のホームページにはアクセスが殺到した。「宙に浮いた年金記録」をたぐり寄せる作業は容易ではない。

 埼玉県の所沢社会保険事務所。1日は通常の年金相談に来た140人に加え、いま問題になっている記録の照会に100人が訪れた。「連日、開庁前の7時ごろから並び始め業務開始時には20人ほどの列ができる」(吉田達生所長)という。

 待合室は順番待ちの人であふれ、常時2〜3時間待ち。最も混雑した29、30日は「5時間待ち」に。このため相談受け付けは午後2時に終了したという。

 日高市の女性(65)は、20年前に4カ月間だけ保険会社で働いていたことを思い出し、厚生年金の確認に来た。証明として家計簿をもってきたが、担当者に「それだけでは確認できない」と言われ、引き続き調査することに。

 入間市の男性(50)は、記録の照会と将来もらえる見込み額を確かめに来たが、3時間以上待つと聞き、別の日に出直すことにした。「どうしてこんなに時間がかかるのか」

 横浜市の横浜南社会保険事務所では、今週前半は年金記録に関する問い合わせの電話が鳴りっぱなし。相談の平均待ち時間も通常の倍の2時間になった。

 28日から、年金記録の取り寄せを専門に行う職員を配置、特別態勢をとった。「徹底的に調べる」(同事務所)

 インターネット上の社会保険庁のホームページにも、ネットを通じて自分の年金加入記録を確認するため、ユーザーIDとパスワードを取得する申し込みが殺到。従来は1日500件前後だった申込数は、5月20日にいきなり3000を突破。24日には7000を超え、31日には1万4000近くに達した。ページ自体へのアクセスも困難な状態だ。

 通常は申し込みから2週間程度で自宅にIDとパスワードを郵送するが、それが遅れることも避けられないという。

 電話で全国からの相談を受け付ける「ねんきんダイヤル」も今週に入ってから、普段の4倍の1日4万件を超える日も。今回は現役世代からの問い合わせが約半数と多いのが特徴だ。

 社会保険庁幹部は「従来は中高年の関心が高かったが、今回はネットや電話で若い世代も自分の記録を確認しようとしているようだ」と話す。

 一方、年金事務への不信感は、「事件」も招いた。

 大分県日田市では先月29日、日田社会保険事務所の事務作業のミスが原因で、同事務所内で窓口の男性職員とレンタルビデオ店経営の男性(58)がトラブルになり、職員の胸を殴ったとして男性が公務執行妨害容疑で逮捕=処分保留で釈放=された。

 男性は、「扶養家族で保険料を納める必要のない妻に、誤って未納通知が送られてきて、半年分を払ってしまった」などとして窓口で男性職員に説明を求めた。その際、窓口に立ったまま待たされたことに腹を立てた、という。

http://www.asahi.com/life/update/0601/TKY200706010389.html