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2007年04月21日(土) 01時24分

多重債務対策 ヤミ金への駆け込みをどう防ぐ(4月21日付・読売社説)読売新聞

 消費者行政の直接の窓口は地方自治体だが、国や警察、弁護士など関係者すべてが緊密に協力しなければ、多重債務問題の解決はおぼつかない。

 政府が「多重債務問題改善プログラム」を決定した。全国500超の市町村に相談窓口を置き、債務者から丁寧に事情を聞く。債務の任意整理や自己破産など解決法も助言して、弁護士などの専門機関に誘導する。

 それ以外の市町村については都道府県がバックアップし、市町村と弁護士などのネットワーク作りも指導する——。そんな体制整備がプログラムの柱だ。

 いくつもの消費者金融業者などから借金を重ね、返済に行き詰まっている多重債務者は、200万人を超える。

 従来の自治体の相談受け付けは、窓口の数が少なく、対応も専門機関への単純な紹介にとどまる場合が多いなど、力不足だった。新施策は一歩前進だろう。

 生活保護や児童虐待などへの自治体の対応の中で、多重債務者が見つかるケースもある。自治体内の各部局がこの問題で連携を強めることも大事だ。

 だが、窓口を整備し、金融や法律の知識を備えた担当者を配置するのは、自治体にとって大きな負担になる。金融庁と総務省が実施したアンケートでは、市町村の71%が専門的知識の不足を、55%が財政や人員面の不安を指摘した。

 国は、こうした懸念が解消されるよう支援しなければならない。担当者の研修・教育への協力はもちろん、必要なら予算面での配慮も検討すべきだ。

 昨年末に成立した改正貸金業法で、2010年までに上限金利を引き下げ、貸付金の総量規制も導入することが決まった。多重債務者の新たな発生に歯止めをかける効果が期待される。

 一方で、金利引き下げで業者の審査が厳しくなり、借りられなくなった人がヤミ金融に走る恐れも指摘されている。プログラムでは、上限金利引き下げの実施までに、相談窓口を整備するとしているが、少しでも早い方がいい。

 プログラムは、債務解消までの生活資金などを低利融資する「日本版グラミン銀行」を普及させる方針も掲げた。

 ギャンブルなど借金の原因を取り除くため、債務者の家族も含めたきめ細かい相談や指導で成果を上げている、岩手県消費者信用生活協同組合がモデルだ。

 生協や非営利組織(NPO)を事業主体に想定しているが、地域によっては金融庁や財務局が金融機関との連携を仲介するなど、行政の後押しも必要だ。実施状況を定期的に点検しつつ、地域の実情に合わせた検討を深めるべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070420ig91.htm