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2007年04月20日(金) 17時10分

電力不正問題 解説 対症療法「甘い処分」毎日新聞

 臨界事故隠しなど全国の原発で発覚した重大な不祥事に対し、経済産業省が決定した処分は、その重大性や件数からみると「甘い処分」にとどまったといえる。法律に触れない不正や時効になった事案が多かったとはいえ、安全確保や信頼回復につながる有効な改善策となるのかどうか疑問を残した。
 吉岡斉・九州大教授(科学史・科学技術政策)は「政府の原子力推進の方針を考えれば予想された処分内容だ。しかし隠ぺいされていた実態はひどい。志賀原発1号機は設置許可取り消しが妥当。過去の事例と比較しても、他の原発も運転停止にあたる。この程度の処分で不正を根絶することは難しい」と批判する。
 一方、日本原子力技術協会の石川迪夫理事長は「東電原発トラブル隠しが発覚した02年以降は隠ぺいなどの数は激減しており、各電力会社は改心してきている。一見、温かい措置と思われるかもしれないが、電力会社自ら一層の努力をすることを求められたといえ、運転停止処分などより責任は重い」と話す。
 不祥事を報告した12社の多くは、地域でのシェアが9割を超す独占企業だ。原子力資料情報室の西尾漠・共同代表は「今回の不祥事で、各電力会社の安全軽視の姿勢が改めて明らかになった。対症療法を繰り返すのではなく、今度こそ安全の重要性を肝に銘じなければ、国民からの信頼は取り戻せない」と話す。【田中泰義、永山悦子】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070420-00000018-maip-soci