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2007年04月20日(金) 13時54分

電力会社不正、50事案を悪質な法令違反と認定 経産省朝日新聞

 電力各社のデータ改ざんや隠蔽(いんぺい)などの不正問題で経済産業省は20日、北陸電力志賀原発1号機(石川県)の臨界事故や東京電力福島第一原発3号機(福島県)の制御棒脱落など原発11事案を含む計50事案を特に悪質な法令違反と認定した。両社に中国電力と日本原子力発電を加えた4社に、原発の安全性を高めるため社長への重大事故の報告義務化の行政命令を出し、計7原発に国の検査官による特別検査実施を決めた。原発の運転停止命令は出さなかった。

 最も悪質とされる99年の北陸電力志賀原発1号機の臨界事故は、手順書に従って作業をしなかったため原子炉の制御棒が抜け落ちたとした。責任体制もあいまいで所長の指示で事故を隠蔽し、データを改ざんしたことから、国の保安規定に抵触し、原子炉等規制法違反と認定した。

 さらに今回の事故を、発生時に格納容器のふたが開いていたなど安全上に問題があったとして国際原子力事象評価尺度でレベル2(異常事象)と暫定的に評価した。11人が死傷した04年の関西電力美浜原発3号機の配管破損事故のレベル1よりも重い。

 制御棒脱落は一連の調査で相次いで発覚したが、悪質な法令違反とされたのは志賀1号機と78年の福島第一3号機の2事案だった。脱落は東北電力や中部電力の原発を含め22年間も続いたが、電力会社間や日立製作所、東芝の両メーカーを通じて情報共有すれば防げたトラブルとしている。

 02年の東電トラブル隠しでは福島第一原発1号機が、同法違反により1年間の運転停止命令を受けた。だが、今回は「すでに安全は確認されており、社会的なペナルティーも受けている」(甘利経産相)として停止命令は出さなかった。

 一方、水力発電で東京電力小武川第三発電所(山梨県)、北陸電力市ノ瀬発電所(石川県)については、国に届けを出さずに工事をして国の技術基準に適合していないとして、運転を停止し、基準に適合するよう修理を指示した。

 電気事業連合会によると、電力12社が国に報告した過去の不正は20日現在、水力、火力、原子力発電所で309事案計1万653件。経産省は、さらに7事案を不正と判断して316事案について審査。軽微なものも含め計154事案を法令違反と認定した。

http://www.asahi.com/national/update/0420/TKY200704200203.html