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2007年04月17日(火) 07時55分

TOTOの温水便座、発火・発煙29件 18万台を点検朝日新聞

 衛生陶器製造最大手のTOTOは16日、同社の温水洗浄便座「ウォシュレット」の一部製品で、今年3月までに3件の発火と26件の発煙事故があったと発表した。同社は同型の製品のうち約18万台に対し、無料で点検・修理をする。該当製品を使っている場合は、コンセントを抜いたうえで、同社に連絡してほしいと呼びかけている。同社は2月中旬までに問題をほぼ把握していた。けが人や、火災の報告は現時点ではないという。

事故が起きたのと同型のTOTOの温水洗浄便座一体型の便器「Zシリーズ」。発火事例では、(1)の部分のカバー下にある制御装置から発火。(2)の部分まですすが広がった 発煙、発火の原因となったコントローラ基板を手に説明するTOTOウォシュレットテクノの井上修治商品本部長(左)=16日午後3時すぎ、北九州市小倉北区で 記者会見で頭を下げておわびする森民治取締役専務執行役員(左から2人目)らTOTOの幹部たち=16日午後3時44分、北九州市小倉北区で 対象製品の見分け方

 TOTOによると、事故が起きたのは温水洗浄便座と便器が一体になった「Zシリーズ」のうち、99年3月から01年12月までに製造された製品。発火事故は06年3月に1件と07年3月に2件、発煙事故が04年5月から07年3月までに計26件、報告されている。

 発火事故では、水タンクを覆うカバーの下にある、温水の温度などを調節する制御装置から火が出て、内部の部品やプラスチック製のタンクカバーが焼けた。

 TOTOによると、制御装置の基板上の端子のめっき処理が不十分だったという。便座に座ったときの振動で、温水ヒーターへの導線のコネクターと端子の接続部分がこすれてめっきがはがれ、接触不良になり発熱。端子の付け根のハンダが割れて基板が傷み、発火や発煙につながった。

 制御装置の部品は当初国内産だったが、99年3月から部品メーカーが製造拠点を中国の上海に変えており、発火・発煙事故計29件はすべてこの移転後に起きたという。調達先からの報告がなく製造拠点の移動は把握していなかったとしている。

 Zシリーズは現在も販売中だが、今回の対象以外の製品や、同社の他機種ではメーカーや部品が違う制御装置を使っており、「安全性に問題はない」(同社)という。

 TOTOは最初の発煙事故の直後から原因を調べ、07年2月中旬には特定したという。ただ07年3月に相次ぎ発火事故が起きた後の4月12日に経済産業省に報告。公表はさらに4日後だった。

 16日に記者会見した森民治取締役専務執行役員は「利用者にご迷惑をかけた」と陳謝。発表が16日になったことについては「原因が究明できた時点では偶発的なものと考えていた」と説明した。

 同社の温水洗浄便座は06年度の出荷が181万台まで増え、連結売上高の約2割を占める。業績への影響は、現時点では分からないという。

 TOTOの問い合わせ先は0120・10・7296(午前9時〜午後6時)。

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 〈キーワード:洗浄便座〉 60年代ごろから輸入品が医療現場などで使われ、80年代以降、国内大手の参入で一般家庭にも普及が進んだ。業界団体によると温水洗浄装置と暖房機能付き便座を温水洗浄便座と呼び、06年の国内販売は約280万台。一般家庭の普及率は6割を超え、うちTOTOのシェアは約5割という。

 〈キーワード:TOTO〉 便器や洗面台など衛生陶器製造の最大手。1917年創立、本社は北九州市。80年に販売を始めた温水洗浄便座「ウォシュレット」は累計2000万台以上が売れた。06年3月期の連結売上高は4947億円、当期利益は129億円。

http://www.asahi.com/national/update/0416/TKY200704160227.html