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2007年04月17日(火) 08時05分

トイレから真っ赤な光と煙 TOTOの発火事故朝日新聞

 生活用品の欠陥による事故が後を絶たない。TOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット」の一部に、発火の恐れがあることが明らかになった。留守中だったら家が焼けていたかもしれないというケースもあったという。最初の発煙事故があったのは約3年前。同社は、公表してこなかった。

 「火事だー」

 3月17日午後7時ごろ、山形県庄内町の女性(74)宅に大声が響いた。仕事から帰った娘が2階の自室で着替えを終えて1階に下りてきたところ、トイレから漏れる真っ赤な光と煙に気付いた。

 娘の夫が消火器で消し止めた。家内には、プラスチックが焦げた異臭が充満した。

 「トイレに燃える物なんてないのに」。女性は当初、トイレのコンセントに差し込んでいた消臭器が原因かと思ったが、火元はウォシュレットだった。

 便座の燃え方が一番激しく、プラスチックが溶けていた。5年ほど使っていたが、これまでは問題なかった。

 翌日、連絡を受けたTOTOの担当者が仙台市から訪れ、最新機種に取り換えたうえで発火した便座を持ち帰った。

 「まさかトイレから火が出るなんて。家に誰もいなかったら、どうなってたんでしょう」。女性は、同様の事故が各地で相次いでいたことは知らなかったという。

 群馬県藤岡市の男性宅で事故があったのは3月20日午後7時50分ごろ。男性の母親が家の中で「ボンッ」という音を聞いた。トイレのドアを開けたところ、プラスチックの焦げたにおいと煙が充満していた。5年ほど前に購入した便座のコントローラー部分が焼けて溶けていたという。男性は「誰もいなかったらと思うと、怖い」。

 通報を受けて駆けつけた藤岡消防署員は、その日のうちに便座を持ち帰った。翌日、TOTOの社員らと一緒に調べたところ、発火場所はプラスチックが溶けた部分と推測。「さらに詳しく検査して報告書を出してほしい」とTOTO側に伝えた。

 報告書が提出されたのは今月15日。同社が一連の事故を発表した前日で、発表と同内容のものだったという。

■発覚、3年報告せず

 TOTOの森民治・取締役専務執行役員ら幹部4人は16日午後3時から、北九州市小倉北区の経済・金融記者クラブで記者会見し、「お客様をはじめ関係者にご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」と頭を下げた。最初の事故から約3年間にわたって公表してこなかったことについては、「原因究明を誠実にやった結果、時間がかかった。ご理解いただきたい」と釈明した。

 最初に発煙事故が確認されたのは04年5月。同社は原因究明のため再現試験を繰り返したが、「なかなか判明しなかった」。その要因として取引先の事情を挙げた。発火・発煙した制御装置のメーカーが99年、国産だった部品を中国製に変更したが、これをTOTO側が知ったのは今年2月だったという。

 事故の公表を見送ってきたことについては、「(制御装置の)周辺は難燃材で覆われ、外部に火を出さない構造になっている。原因をはっきりさせて対応しようと考えた」。原因を特定したのは今年2月。3月に発火事故が2件相次ぎ、被害拡大の可能性が否定できないと判断し、発表に踏み切ったという。

 修理対象は約18万台。同社は新聞広告やホームページで利用者に連絡を呼びかけると同時に、約400社の代理店を通して対象製品の取り付け先を確認する。中村均・お客様本部長は「できるだけ早くしたいが、1年くらいかかるのではないか」との見通しを示した。

     ◇

【最近発覚した主な生活用品の欠陥】

《発覚時期》 《概要(製造元)》

07年3月   洗濯機から発火、民家全焼も(シャープ)

同年2月   ガス湯沸かし器でCO中毒(リンナイ)

同年1月   洗濯機から発火、やけども(三洋電機)

06年12月   携帯電話用電池が破裂、やけども(三洋電機)

同年8月   浴室乾燥機で火災、民家全焼も(三菱電機など)

同年8月   事務用シュレッダーで幼児が指切断(アイリスオーヤマなど)

同年7月   ガス湯沸かし器でCO中毒(パロマ工業)

05年4月   石油温風機でCO中毒(松下電器産業)

http://www.asahi.com/national/update/0417/TKY200704170007.html