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2007年04月16日(月) 15時58分

データ改竄 関電栃生発電所も処分 水利権一部取り消し 国交省方針産経新聞

 関西電力などが水力発電所のデータを改竄(かいざん)していた問題で、国土交通省と経済産業省は16日、関西電力の栃生(とちう)発電所(滋賀県高島市)の水利権を一部取り消す方針を固めた。データ改竄問題では東京電力塩原発電所(栃木県)の取水許可取り消しの方針が明らかになっている。

 栃生発電所は高島市朽木栃生の淀川水系安曇川に建設され、大正12年1月に運転開始。上流の貫井取水ダムから取水し、最大出力は1370キロワット。しかし建設当時、水路トンネルの地質が悪く、トンネル壁を厚くする必要が生じたため、当初計画した許可最大取水量の約8割程度しか通水できない区間ができたとされる。

 建設後の水利権更新は昭和22年、52年の2度あり、関電は52年の更新時には、既存の設備では許可最大取水量を通水できない事実に気付いていたが、既得水利権を失うことをおそれ、かさ上げした取水量のデータを国交省に報告していた。

 国交省などは、こうした遊休水利権化していた事実を隠し、水利使用許可の更新を受けていた行為を問題視し、かさ上げさせた遊休水利権分の許可を取り消す方針を固めた。

 許可が一部取り消された後の1年間は検証期間として取水量の測定・報告の頻度を年1回だったものは月1回に増やすなどの措置を取り、滋賀県や下流域の自治体に今回の処分に至る経緯、内容を説明、報告することを義務付ける。

 ■相次ぐ業界不正 長年の行為に厳罰

 電力会社による一連の不正問題の発覚は昨年10月、中国電力の土用ダムのデータ改竄(かいざん)がきっかけだった。ダムの沈下量を平成4年から9年まで変化はないとしたもので、中電は改竄を知りながら、国交省へ報告していなかったとされる。

 その後、電力会社によるトラブル隠しが相次いだ。北陸電力は11年6月、志賀原発で制御棒3本が抜けて臨界事故が起きたにもかかわらず、国に報告せずデータを改竄し、隠蔽(いんぺい)。しかも組織的な偽装工作が行われていた。このほか東京電力は昭和59年に福島第1原発2号機で原子炉の緊急停止を隠蔽していたことなどが発覚し、電力業界を揺るがす不祥事に発展した。

 事態を重くみた経産省原子力安全・保安院は、水力・火力・原子力発電設備におけるデータ改竄や必要な手続きの不備の有無などの調査を含めた総点検を指示。今年3月末までに結果報告を求めていた。その結果、不正は原発の104件(7社)を含む計12社306項目に及んでいたことが判明。さらに電気事業連合会が今月5日、延べ件数が約1万650件に及んでいたことを公表し、このうち水力は約9000件と大半を占めた。

 今回処分の対象となった関電の栃生発電所は、昭和42年から平成17年まで毎日の取水量のデータを改竄し、国交省近畿運輸局に報告し続けていた。河川の水を“盗む”超過取水を長期間続けた悪質な行為に対し、国交省などが厳しい対応をとったことになる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070416-00000019-san-soci