記事登録
2007年04月13日(金) 21時43分

<生保不払い>37社が25万件290億円 調査結果報告 毎日新聞

 生命保険38社は13日、金融庁に01〜05年度の5年間を対象とした保険金の不払い調査の結果を報告した。不払いなしと報告したカーディフ生命保険を除く37社の不払い件数は計約25万件、総額は約290億円にのぼった。3大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)特約などで、保険金2000万円を支払っていなかった事例もあった。これから契約者に請求を促したり、事実確認が必要な契約は少なくとも110万件残っており、調査完了は9月末までずれ込む。生保は顧客への支払いを6〜9月に終える見込みだが、最終的な不払い件数と額は膨らむ可能性が高く、金融庁の厳しい行政処分は避けられない見通しだ。
 金融庁が2月に、生保38社に4月13日までの報告を命令していた。これまで生保業界の不払いが報告されたのは05年の32社、計3000件余りで、今回はそれをはるかに上回った。
 日本生命保険や第一生命保険など主要12社の社長は同日相次いで会見。第一生命保険の斎藤勝利社長は「お客様にご心配とご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」と陳謝。最終的な調査結果を踏まえ、経営陣の処分を含む対応を検討する方針を示した。
 3大疾病特約では、がんの告知をされていない場合など、受給できることに気づかなかった契約者や家族が請求せず、結果として、保険金を受け取っていない事例が目立った。
 また、契約者はきちんと請求したのに、生保が診断書に記載された手術を見落とし、保険金・給付金が本来の受け取り額より少なかった事例も多かった。生保が十分な確認をしなかったのが原因。保険料が払い込まれず保険契約が失効した際に、本来なら契約者に返すべきお金を返していなかった事例もあった。
 このほか、契約者が1種類の特約につき請求した際、同時に受給できる可能性のある別の特約を請求しなかったため、不払いかどうか現時点で判明していない契約も多い。契約者は、入院時に給付金を受け取れる入院特約と、退院後の通院費を保障する通院特約の両方に入っているのが一般的だが、通院特約は請求し損なうことが多く、これが大量不払いの原因となった。中にはこうした契約の半数に不払いの可能性がある生保もあり、件数、金額は今後増えるのは確実。
 生保は、契約者が請求を忘れていないかを調べる新たなコンピューターシステムや他に支払いができないかをチェックする専門部署を作るなどの再発防止策を導入する。【野原大輔】
 ◇ことば◇
 【保険金不払い】 保険会社が、本来は契約者に支払うべき保険金を一部しか支払わなかったり、保険金の支払い請求自体を不当に拒否した問題。05年に生損保業界で発覚後、各社で多数の不払いが明らかになり、金融庁は調査命令や行政処分を出して保険金支払い体制の改善を求めてきた。今回の生保の調査で問題となったのは、(1)契約者が請求したのに生保側のミスで支払額が不足(2)支払いの可能性があるのに、契約者からの請求がないため、支払っていない「請求待ち」(3)解約返戻金や遅延利息などを払っていないものなど。
 ◇解説…契約者への裏切り行為 経営責任極めて重く
 明治安田生命保険で05年2月に保険金不払いが発覚してから2年。ようやく全容が見えてきた生保の不払いは、契約者への裏切り行為そのものだった。生保の全経営者の無為無策を示すもので経営責任は極めて重い。
 今回多かった不払いは、支払いの可能性があるのに、契約者から請求が来ないことを理由にして、生保が対応しなかったものだ。契約者が少なくない保険料を支払っているのは、まさかの時に保険金を受け取るのを期待してのこと。だが、生保の対応は、支払わなくてもいい理由を探し出し、自己を正当化することだったと言わざるを得ない。営業業績を優先し、保険の本来の役割を放棄したに等しい。
 保険の基本に立ち、契約者の目線に立てば、今回の事態を防ぐことは決して難しくないことだった。それが長年、実現できなかった事実は無視できない。
 金融庁は契約者保護の立場から一連の不払いの調査を命令。生保はようやく、調査にあたる人数を増やすなど、対応は明らかに後手後手に回った。
 住友生命保険の横山進一社長は「サービスの品質競争が始まった」と述べたが、「契約者重視への転換」は果たしてできるのか。生保は重い課題を突きつけられている。【野原大輔】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070413-00000114-mai-bus_all