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2007年04月11日(水) 00時53分

コムスンへ苦情 「大変たくさん」と都読売新聞

 「『指定取消』の4文字は重い十字架だ」。虚偽申請を指摘された訪問介護事業所3か所の廃業を東京都に届け出た際、「コムスン」(東京都港区)の樋口公一社長は、そう漏らしたという。

 大手事業者が激しい競争を繰り広げる中、横行していた虚偽申請や不正請求。都は「リーディングカンパニーとしてとんでもない話だ」と批判した。

 都福祉保健局の梶原秀起・指導監査部長は、業務改善勧告を公表した10日の記者会見で、「コムスンに対する苦情は、都には大変たくさん来ている」とあきれた様子で語った。

 同社は、自主廃業した3事業所以外にも、16事業所で、管理者やヘルパーの不足などを理由とした業務改善勧告を受けた。同局によると「ヘルパーを派遣してもらう時間を変更しようとして事業所に電話をしたが、いっこうに連絡がつかない」といった相談は、同社に関するものが際立って多いという。

 都の指摘に対して、コムスンの親会社のグッドウィル・グループ(GWG)は同日午後、ホームページで「コムスンに対する改善勧告について」とした見解を発表。その中で、都から虚偽申請と認定された人員不足について、「申請から事業開始までに時間を要し、入社辞退や退職する者もいるため、齟齬(そご)が生じることもある」などと説明している。

 しかし、この点について同局の篠田林歌・指導第一課長は、「申請時から退職した職員の名前を使うなど、やむを得ない事情による欠員とはみなせない。こちらもしゃくし定規に『欠員だから即、指定取り消し』と判断したわけではない」と述べ、単純な過失とは言えないことを示唆した。

 同社は3事業所を自主廃業したことについて、「ビジネスモデルの再構築のため、事業所の統廃合を進めており、統廃合の予定事業所に含まれていた」とする。これに対しても都は、このうち奥戸事業所(葛飾区)について、約1か月前に廃業した東新小岩事業所の利用者を振り向けたばかりだったことを挙げ、「普通の企業の感覚ではあり得ない」と指摘した。

 さらに都は、樋口社長に対して「(廃業届は)社会から処分逃れと見られますよ」と忠告した際、「介護事業者にとって『指定取消』の4文字はあまりにも重い十字架だ。どうしても、出させてほしい」と突っぱねられたことも明かした。都は、こうした経緯などから、同社の廃業届は処分逃れを目的としたものだったとの疑いを強めている。

 取材の申し込みに対し、GWG広報IR部は「公表した文書以外のコメントは一切しない」と回答した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070410itw6.htm