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2007年04月10日(火) 06時12分

裁判員、目立つ市民誘導 模擬制度で課題朝日新聞

 市民の「健全な社会常識」を裁判に反映させるために09年までに導入される裁判員制度で、プロの裁判官が、ふつうの市民から選ばれた裁判員の考えを誘導しすぎるおそれがないかという懸念が強まっている。法曹三者が、全国で行われている模擬裁判の検討を進める中で、課題として浮上してきた。近く制定される裁判員制度に関する最高裁規則にも、評議のルールが盛り込まれる見通しになっている。

 誘導のおそれが最も強いのが、被告人が有罪か無罪かなどを話し合う「評議」の場だ。

 評議は、制度導入後の「本番」では、公開法廷での公判を終えた後に非公開で行われる。ただ、現在全国で行われている模擬裁判の評議は、録画されるなどして、裁判官と検察官、弁護士の法曹三者の間での検討材料になっている。

 検討過程の中では、裁判官の間でも問題視されるケースが相次いでいる。さいたま地裁が昨年行った評議は「裁判官が自分の考えを押しつけ過ぎている」と指摘されている。「裁判官がしゃべり過ぎ、裁判員が生徒の『ゼミ』になっている」と形容される例もある。

 関係者によると、最高裁規則に盛り込むことが検討されているルールは(1)検察官と弁護人は裁判員にわかりやすい立証をする(2)裁判官は、裁判員が意見を言いやすいように努める(3)裁判官は、法廷の審理の合間などに行う中間評議の際、最終決定ではないので意見を固めなくていいなどと注意喚起する——といった内容。

 日本弁護士連合会の内部では、模擬裁判の評議を法律家や刑事法、心理学の研究者らが分析した結果などをもとに、(1)裁判官と裁判員のやりとりばかりではなく、裁判員相互の議論ができるような場を作るように心がける(2)裁判員の発言に裁判官が反論する形をなるべくとらないようにする(3)評議で裁判官同士、裁判員同士がまとまって座らない(4)裁判長の補助的な役割に終始しがちな陪席裁判官にもっと発言してもらうようにする——といった改善策が検討されている。

http://www.asahi.com/national/update/0409/TKY200704090300.html