記事登録
2007年04月09日(月) 12時25分

キヨスク180店休業中 ベテラン店員去り人手不足朝日新聞

 首都圏のJR駅のホームで、シャッターを閉めたままのキヨスクが目立つ。改札内をショッピングモールにする「駅ナカ」があちこちに登場し、愛称も7月からキオスクに変える戦略の中、店員が熟練の技で客をさばいてきたキヨスクに何が起きているのか。

 JR新宿駅の山手線ホーム。1日から2カ所あるキヨスクはシャッターが閉まったままだ。店の前には、「しばらくの間閉店させていただきます」の言葉と近くの店舗を案内する地図が張り出されている。

 乗り換えで駅を利用するという会社員の猿橋ももさん(29)は、その張り紙に見入っていた。お茶を買うつもりだった。「店員さんが元気に素早く対応してくれるのが好きで、よく使っているんですけどね」と残念そうだ。

 キヨスクを経営するJR東日本の子会社、東日本キヨスクによると、4月6日の段階で、首都圏の約180店が休業している。

 東京や上野、池袋、横浜など、もともと複数のキヨスクがあった大きな駅ばかり。このほか、数十店舗が午前中だけや午後からなど営業時間を短縮している。

 原因は人手不足にある。

 キヨスクの店員は、いずれも経験を積んだベテラン社員が担当していた。100点を超える商品の値段をすべて覚え、おつりはほとんど暗算。一度に多くの客をさばく熟練の技が必要だったためだ。しかし、売り上げに対して人件費がかかるため、赤字の店舗が多かったのも事実だ。

 そこで、JR東日本はキヨスク改革に乗り出した。04年からICカード「Suica(スイカ)」を使えるレジを実験的に導入。数秒刻みで客をさばく「名人芸」の代わりに、代金を電子マネーで受け取る仕組みを採り入れた。

 昨年夏からは、40歳以上を対象に早期退職者を募り、店員約400人を含む社員約800人が職場を去った。ベテラン店員の抜けた穴を、初任給18万〜18万7000円の契約社員、時給770〜1250円のアルバイトで補うことを想定していた。年齢は45歳くらいまでが対象だ。

 ところが、景気回復でほかの働き口が増えたことが計算を狂わせた。

 応募者が予想を大きく下回った。あわてて駅などにポスターをはって宣伝を始めたが、反応はいま一つ。2月からは、人手が足りずに開店できない店が相次ぐようになった。店員募集は続いているが、休業店舗再開のめどはたっていない。

 ここ数年、キヨスクは逆風にさらされてきた。ピークの96年には1392店あったが、今は813店。

 不採算店舗を閉めたケースもあるが、大きいのは業態の変更だ。東日本キヨスクが発足した87年にはほとんどなかった「ニューデイズ」などのコンビニ型店舗は353店に、土産店や弁当店などの専門店も561店に増やした。

 同社の売り上げに占めるキヨスクの割合は、88年の95%から、06年の見込みでは34%まで下がった。

 背景には、利用者の好みの変化があるという。キヨスクのメーン商品だった、たばこ、新聞、雑誌はいずれも売れ行きが落ちてきている。買う側にたくさんの品物から自分で手にとって選ぶ習慣が身につき、品数が限定されるキヨスクを敬遠する客が増えた。

 同社は、募集アルバイトの時給などの見直しはしないという。

 このままキヨスクは消えてしまうのか。

 担当者は「決してそんなつもりはありません。ホームなど小さなキヨスクしか置けない場所もあり、実際に、朝、新聞が買えないなどの苦情もきていて需要は高い。一刻も早く再開したい」と話す。

     ◇

 JR東日本は4日、駅売店の愛称「キヨスク」を、7月から「キオスク」に変更すると発表した。旧国鉄時代の73年から使われてきたキヨスクは、トルコ語のあずまやが語源。英語表記は「KIOSK」だが、「清い、気安い」の語呂合わせから名付けられた。運営会社「東日本キヨスク」は、同時に「JR東日本リテールネット」に社名変更する。

http://www.asahi.com/life/update/0408/TKY200704080057.html