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2007年04月07日(土) 21時07分

減点逃れ? 駐車違反の処理、7割が「車の持ち主」朝日新聞

 昨年6月の道路交通法の改正後、放置駐車違反の処理件数の約7割を「運転者」ではなく「車の持ち主」が占めていることが警察庁のまとめでわかった。改正に伴って車の持ち主も違反金を納める制度が始まったが、違反行為者ではないため出頭不要で、免許証の取り消しや停止につながる違反点数もない。この制度を使って「車の持ち主」として、運転していたことを隠す「減点逃れ」が横行しているのでは? こんな指摘が出ている。

 改正前の03〜05年、摘発された車の運転者が出頭しないケースが全体の2〜3割あった。車のナンバーから持ち主は割り出せるが、実際誰が運転していたのか特定するのは時間と労力がかかり難しい場合が多い。当時、持ち主の責任は問えなかったため、運転者が特定できなければ、大半が「逃げ得」になっていたとされる。

 改正後は、運転者が特定できなければナンバーから持ち主の所在を特定し、各公安委員会が運転者の反則金と同額の放置違反金の払込用紙を送付するようになった。

 だが、持ち主は違反行為者ではないため、違反点数を科すことはない。このため、改正前から、持ち主として放置違反金を納める点数逃れが出る恐れがあると指摘されていた。

 警察庁の調査では、昨年6〜7月の全国の駐車違反で、昨年10月末までに違反処理が済んだのは約33万件。うち運転者が出頭したのは全体の約3割(約9万3000件)にとどまり、約7割(約23万7000件)は放置違反金のみが支払われていた。改正前の運転者の出頭率は7〜8割だった。

 実際、点数逃れの運転者はいる。大阪市東成区で昨年6月、マイカー(普通車)の路上駐車で取り締まりを受けた自営業の男性(42)は「(駐車禁止場所に)車を止めたのは自分だが、点数は嫌だから出頭しない」と話した。「持ち主」として放置違反金1万5000円を金融機関から振り込んだという。

 違反車両にはられるステッカー(標章)には「車の使用者は放置違反金の納付を命ぜられることがあります」という文言が、運転者に対する反則金納付より目立つように印刷されている。

 警察庁交通指導課は「(出頭するドライバーが激減した)理由は不明だが、使用者(持ち主)の責任追及が可能になったことで、違法駐車の抑止になっていると考えている」と話している。違反を繰り返せば、車の使用制限のペナルティーがあり、改正後、昨年11月末までに常習的な放置駐車車両への使用制限命令は88件という。

 交通ジャーナリストの今井亮一さんは「逃げ得を防ぐ法改正だったのに、金さえ払えば逃げ得ができるようになった。職業ドライバーの場合、金より『減点』の方が痛い。ゴールド免許を持ったまま、違反を繰り返すことも起こりえる」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/0407/OSK200704070071.html