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2007年04月07日(土) 08時32分

東京都知事選 2つの焦点、インフラ事業と新銀行東京フジサンケイ ビジネスアイ

 ■インフラ事業 公共事業削減カバー

 都知事選では、オリンピック誘致など大規模プロジェクトが争点になっているだけに、ゼネコンや不動産会社の関心は高い。特に、業界が注目しているのが都心のインフラ整備だ。

 準大手ゼネコンの幹部は、「公共事業の削減で苦しんでいる土木部門に光が差すかもしれない」と、オリンピック誘致に伴う、道路や鉄道網整備への期待を膨らませている。

 都心のインフラ整備では、すでに首都高速道路の都心環状線の外側にもう1本の環状線(中央環状線)を通す予定で工事が進行中。工事は、2007年12月末までに6・7キロ、3年後に4・3キロ、7年後に9・4キロが完成する予定。完成後は、都心部を通らずに郊外へと出る道路網が整備され、「都心の首都高の渋滞がなくなる」とも期待されるプロジェクトだ。

 首都高速道路会社は、東京外かく環状道路、首都圏中央連絡自動車道を合わせた「首都圏3環状道路」の重点整備の方針を打ち出している。

 都知事選の結果によっては、プロジェクトの進行に大きな影響が及ぶ可能性もあるが、業界では、「スピードアップだけでなく、周辺道路を合わせた道路インフラ整備も進めてほしい」との期待の声が出ている。

 東京オリンピックが開かれる場合の選手村は東京・有明地区に設置される計画だが、オリンピック開催を呼び水にマンションやオフィスビルなど、ベイエリアでの大規模地域開発が活気づくとの見方も出ている。

 ある大手不動産会社首脳は、昨年東京都が主催した官民懇談会で、「これからはデベロッパーというより都市プロデューサーとして役立ちたい」と意欲を示しており、都のプロジェクトへの期待は高まる一方だ。

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 ■新銀行東京 経営に大なた確実

 東京都知事選では、経営不振が続く「新銀行東京」の扱いが争点の一つになっている。都知事選の主要候補の公約には、新銀行東京について「売却」「民営化」「解体的処理」といった言葉が並ぶ。設立の当事者である現職の石原慎太郎氏も、「立て直し」を明言。どの候補者が当選しても、銀行経営に大胆なメスが入れられることは確実な情勢になっている。

 新銀行東京は、4年前の都知事選での石原氏の公約に基づき、都が1000億円を出資して2005年に設立された。都内にて10店舗を展開し、中小企業にターゲットを絞った営業を展開している。

 設立の背景にあったのが、当時、社会問題化していた民間銀行の「貸し渋り」だ。しかし、経済情勢の好転で財務内容を改善した大銀行が中小企業への融資に力を入れ始めたことで、経営環境は当初の想定から激変。昨年11月に発表された9月中間決算では、最終損益は154億円の赤字(前年同期は95億円の赤字)となり、「開業3年で黒字転換」という目標は絶望的な状況だ。

 候補者の公約では、売却、解体の声が目立つが、金融業界では「焦げ付きが多いなど、確立されたビジネスモデルができていない。既存の金融機関が買収先として名乗り出ることは考えにくい」(大手銀)といった冷ややかな見方が強い。

 都知事選で、金融機関の問題が争点になったのは、経営破綻(はたん)した2つの信用組合への公的資金の投入が問題になった95年の選挙以来。この時は、青島幸男氏が「破綻処理に公金は投入しない」ことを公約に掲げて当選したが、結局、公約を撤回して投入に追い込まれている。

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【用語解説】東京都知事選

 次期東京都知事を選出する選挙で4年に1度行われる。現在の東京都知事の石原慎太郎氏(74)はこれまで2期務めており、3選を目指す。8日投票の東京都知事選は、東京オリンピックの招致に意欲的で「東京再起動。」をスローガンに掲げる石原知事に、前宮城県知事の浅野史郎氏(59)、建築家の黒川紀章氏(73)、発明家のドクター・中松氏(78)らが挑む。

 立候補者は総勢14人で、そのほかの候補者は以下の通り。

 ▽山口節生氏(57)=不動産鑑定士▽吉田万三氏(59)=前東京都足立区長、歯科医師▽外山恒一氏(36)=ストリートミュージシャン▽高橋みつる氏(61)=タクシー運転手▽佐々木崇徳氏(64)=元警察官▽桜金造氏(50)=タレント▽高島龍峰氏(71)=易学者▽内川久美子氏(49)=風水研究家▽鞠子公一郎氏(33)=元会社員▽おがみおさむ氏(65)=作家。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070407-00000003-fsi-bus_all