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2007年04月04日(水) 01時31分

4月4日付・編集手帳読売新聞

 パソコンに入力したはずの文章は、「それは会社の方針とのこと、正しいようです」。間違って変換され、「それは会社の方針とのこと、但(ただ)し異様です」◆誤変換の文例を集めた日本漢字能力検定協会の「変漢ミス」コンテストで昨年、優秀作品の一つに選ばれている。この文例が妙に忘れがたいのは、誤変換された「会社の方針」に時たま出くわすせいかも知れない◆番組捏造(ねつぞう)が発覚した3日後、関西テレビは千草宗一郎社長の報酬カットを発表している。記者会見もなく、ファクス通知のみ、「その程度の不祥事ですよ」と言わんばかりの対応には驚いた◆早い幕引きが会社の方針として正しいようです。そう考えての減俸処分であったろうが、事件の全容も明かさぬままの軽めのお仕置きが世間の目に、「但し異様です」と変換されて映るとは気づかなかったらしい◆捏造番組が生まれるには生まれるだけの土壌があったのだと、緊張感を欠いた事後対応が教えている。2か月余りに及んだ迷走の末、千草社長がきのう、引責辞任した。一から出直しである◆優秀作品には、「常識力検定を導入し…」「上司気力検定を導入し…」という文例もあった。新経営陣に問われているのは世間並みの「常識力」だろう。規範意識を制作現場の隅々に徹底する「上司気力」も誤りではない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070403ig15.htm