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2007年04月02日(月) 08時00分

聖心教授DM博士号 調査委設置 早大元教授も産経新聞

 「ディプロマ・ミル」(DM)などによる学位商法問題で、聖心女子大の教授がDMとされる団体の博士号を取得し、使っていたことが1日、分かった。同大は調査委員会を設置して事実関係の調査に乗り出した。現役教授のDM学位所持が発覚したのは初めて。また、早稲田大でも先月定年退職した元教授が、実態不明の「大学」が出す博士号を取得、使用していたことが判明した。文部科学省は全国調査を実施する意向を示しており、問題はさらに拡大しそうだ。

 関係者によると、聖心女子大の問題の教授は平成13年、DMとされる「クレイトン大学」(Clayton University)の博士号を日本で取得し、16年に聖心女子大に教授として採用された際などに、この学位を使用。クレイトン大日本事務局のホームページ(HP)では、同大の顧問とされていた。

 クレイトン大は、職歴や学歴を単位化し、日本語の論文でも学位の取得が可能だが、同大の本校があるとされる米では公的な使用を禁止する州もある。ルイジアナ州の住所地は私設私書箱で、同州に教育機関としての登録もないという。

 同教授は産経新聞の取材に対し、学位の取得と使用については認めた。聖心女子大は、「調査中」としている。

 一方、早大の元教授は11年に取得した「国際学士院大学」(International Academy of Education University)の博士号を早大の教員データベースなどに掲載。早大で博士課程は修了したが、博士号は得ていない。しかし、著作の著者紹介に「早稲田大学大学院博士課程修了。文学博士」と記し、早大の博士号と誤解する記載をしていた。

 国際学士院大関係者によると、同大本部は「ニューヨーク」だが、具体的な住所は不明。教育研究者が電話でニューヨーク州に確認したところ、「(同大は)存在しない」との回答を得た。

 米での実態が確認できないにもかかわらず、同大の日本事務局は「(住所も含め)答える必要はない」とし、取材に応じていない。

 早大によると、元教授は「20万〜30万円を払い、日本の事務局に日本語で論文を提出して学位を得た」と話している。同大は「誤解を招くような学位だった。再発防止のための基準とチェックシステムを作る」という。元教授は退職直前に学部長注意となった。学位商法問題で大学が対策を取るのは初めて。

 DMに詳しい静岡県立大の小島茂教授は「韓国ではDM学位を使った大学教授が摘発された。最高学府である大学で教授の学位の取り扱いはどこよりも厳格さが求められる」と指摘している。

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【用語解説】学位商法問題

 博士号などの学位の販売を目的とする米国の団体(ディプロマ・ミル=DM)などが、代金を振り込むだけで、非常に短期間で学位を与えるなどし、キャリアアップやビジネスの箔(はく)付けに悪用されている問題。米では連邦捜査局による摘発や公職追放など社会問題化。日本でも軽犯罪法違反(学位詐称)にあたる可能性が指摘されている。

 日本におけるDMなどの活動実態について、産経新聞などが昨年末から継続的に報道。

 文科省は「学位の質が下がる」と問題視しており、全国の大学に注意喚起。安全な大学を紹介するユネスコの「ホワイトリスト」に参加する方針を示している。2月には文科相が国会質問に答え、「ニセブランド学位」の全国調査を実施する意向を表明した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070402-00000000-san-soci