記事登録
2007年03月31日(土) 18時57分

叔父の遺産 長男に…許せない読売新聞

 30歳代主婦。先日、叔父が病気で急死しました。優しい人でした。仕事が忙しく病気が悪化し、亡くなる前は、少し歩いただけで息が上がるほどでした。

 叔父には妻と成人した3人の子がいます。妻は何度も叔父を裏切り、結局、病気の叔父を残して家を出ました。子どもたちも家に寄りつきませんでした。

 失意の叔父をだれよりも心配し、支えていたのが、伯母と私の母でした。ほぼ毎日家に通い、食事や仕事の手伝いを続けました。

 ところが叔父が亡くなると、叔父の長男夫婦や、長男の妻の実家の態度が一変しました。葬儀を仕切ったり、親族に口を出すようになりました。遺産目当てだろうと思います。母は「長男夫婦は叔父の家の鍵を持っているから、遺品を物色される」と心配しています。

 叔父が亡くなり一番心を痛めているのは伯母と母です。長男一家に嫌悪感を覚えます。どうしたら、こちらの気持ちをわかってもらえるでしょうか。(東京・H子)

 叔父さんが一人寂しく亡くなった状況をみると、あなたが長男一家に嫌悪感をもつのも、もっともです。でも、生前寄りつかなかったとはいえ、叔父さんの子どもたちは、相続人として遺産を受け継ぐ権利があります。また、社会慣習上、喪主は長男でしょうから、その一家が葬儀を仕切ってもおかしくありません。

 一方、あなたの母上や伯母さんは、相続人ではないので、いくら面倒をみたとしても、そのお礼に財産を分け与えるというような叔父さんの遺言がない限り、遺産の処理に口出しできない立場にあります。

 残念ながら、遺言はなさそうなので、長男一家に対し、伯母さんや母上がとやかく言えば、お礼目当てと勘ぐられるのが落ちだと思います。もともと、病気の親を放っておいた子どもたちに、あなた方の気持ちをわからせるのは無理ですから、心ない人たちを相手にするのはやめましょう。

 叔父さんは、家族に恵まれなくても、伯母さんや母上の親身なお世話に、満足して天国に行かれたのではないでしょうか。

 (土肥 幸代・弁護士)

http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/kinsen/20070331sy51.htm