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2007年03月31日(土) 14時38分

「はだしのゲン」のタイ語訳完成 タイ女性、10年かけ朝日新聞

 広島で被爆した少年がたくましく生きる姿を描いた漫画「はだしのゲン」のタイ語訳が完成した。タイ人女性が刊行を決意してから10年。全10巻が31日までに書店に並んだ。副読本に使いたいという学校関係者からの問い合わせも相次いでいるという。

「はだしのゲン」のタイ語訳を出したチャタナコンさん

 出版にこぎつけたのは、チャタナコン・オンカシンさん(49)。長崎県諫早市の長崎ウエスレヤン短大でタイ語などを教えていた97年、広島に旅した折に「ゲン」を見つけ、読んでみた。勇敢で思慮深い主人公や被爆の実相に強く揺さぶられ、翻訳を思い立った。作者の中沢啓治さん(68)に会って了解をもらった。

 帰国後、堅い本の出版で定評のあるマティチョン社と交渉し、去年6月から刊行が始まった。4巻まではチャタナコンさんが英語版から訳し、残りはタマサート大3年生のウォラジャラス・マンチュナコンさん(20)らが日本語版から訳した。

 チャタナコンさんは「この漫画は戦争の悲惨さを伝えるだけではない。アジアでは戦時中の日本と言えば、侵略の面ばかりが語られるが、多くの日本人が戦争に反対し、国内では被害者だったことも分かってもらえる」と話している。

 中沢さんは「多くの国で読んでもらえることは作者冥利(みょうり)に尽きる。アジアでは、日本の戦争を違った角度から見る機会になって欲しい」と話す。

http://www.asahi.com/international/update/0331/006.html