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2007年03月31日(土) 07時02分

都知事選、裏方表舞台へ 浅野氏、民主の支援解禁宣言河北新報

 東京都知事選は30日、選挙期間を折り返した。前宮城県知事の浅野史郎氏(59)はこの日を境に、民主党幹部らと初めて並んで街頭演説を行うなど、政党色を薄めた浅野流戦術をギアチェンジした。3選を目指す石原慎太郎氏(74)を支援する自民党も応援姿勢をより鮮明にする。夏の参院選の思惑も絡み、自民、民主の二大政党対決の構図がせり出してきた。(都知事選取材班)

<都議候補並ぶ>

 30日昼。浅野氏が大田区のJR蒲田駅前で行った街頭演説は、これまでにない光景があった。

 同日告示された都議補選の民主党公認候補とともに、同党の菅直人代表代行や松原仁衆院議員(比例東京)らが並び、その間に浅野氏が立った。

 マイクを握った浅野氏は「民主党に今までだいぶ遠慮していただいた。しかしみんなの力で戦うときに、遠慮はもういらない」と政党支援の解禁を宣言した。菅代表代行も「浅野さんを全力で応援している」と応じた。

 浅野氏は告示後、「応援弁士もおりません」と、かたくなに1人で街頭演説を続けた。無党派層を引きつけるため「地盤も看板もカバンもない」(浅野陣営)中で、単独遊説という浅野流にこだわりを見せた。推薦ではなく支援にとどめた民主党は、ポスター張りやビラ配りなど裏方に徹し、浅野流の演出に全面的に協力してきた。

 しかし、中盤を前にした報道各社の世論調査で、石原氏との差が詰まらず、民主党支持層に浅野氏支持が浸透し切れていないと報じられると、陣営から焦りといら立ちの声が漏れ始める。

 「浅野流は東京では通用しないのではないか」「砂漠で水をまくようなことを続けている」
 浅野選対の関係者が戦術変更を口にし始めたのは今週初め。「今まで1人でいい形をつくれた。ここに組織力という添加剤を加え、一気に走る」

 選対幹部は「窮余の策ではなく、当初のシナリオ通りの一手」と強調する。宮城県で浅野選挙に携わり、都知事選の選対にも入る別の幹部は「宮城県知事選でも菅氏の応援はあった。浅野流は変わってない」と勝負どころを後半戦と読む。

<登場前露払い>

 一方の石原陣営。30日夕、豊島区のJR池袋駅前の街頭演説では、元環境相の小池百合子首相補佐官らが応援に。環境庁長官を務めたこともある石原氏とともに、都のディーゼル車排ガス規制などの実績を強調した。

 石原氏に推薦は断られた自民党だが、これまで自民、公明両党の国会議員や都議らがずらりと選挙カーを囲むスタイルをとる。議員らはマイクを握っては「宮城で借金を増やした浅野氏はいらない」と、石原氏登場前の露払いを演じた。

 石原氏選対関係者は「浅野氏は五輪招致などで言うことが変わってきているが、うちはスタンスがぶれない。政党との関係は今後も同じ。距離感もぶれない」と強調するものの、29日には中川昭一自民党政調会長が党三役として初めて応援演説に入った。さらに中川秀直幹事長も近く応援に入る予定といい、政党色を強めている。

<「手法こそく」>

 これに対して共産党推薦の元足立区長吉田万三氏(59)の陣営は「途中から政党が出てくるなんてこそくなやり方。わが方は政党隠しなんてせず、堂々とやる」と話す。

 「都のトップを選ぶだけではなく、夏の参院選を含め、今後の国内政治の行方を占う」(政党関係者)との重みを持つ都知事選。政党対決という新たな要素を加え、激しさを増しそうだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070331-00000004-khk-l04