記事登録
2007年03月31日(土) 00時00分

夕張市揺れた9カ月 職員142人退職辞令朝日新聞

■市施設も相次ぎ閉鎖

 年度末を迎えた夕張市で30日、142人の職員が退職辞令を受け取った。昨年6月の財政再建団体入りの表明以来、激しく揺れた9カ月。「悔しい」「区切りがついた」。職員らは様々な思いを胸に市役所を去った。多くの市の施設も、相次いで閉鎖した。週明けから、再生に向けた新たな歩みが始まる。

 退職辞令交付式は、この日の午前、市民会館などで行われた。

 伊吹敏昭総務部長(59)は朝、車で市役所に通勤する途中、自分が中心となってまとめた早期退職制度で辞めていく職員の顔が目に浮かび、涙が止まらなかった。

 「街を何とかしたいと職員はがんばった。結局、自分の首を絞めるようになって悔しい」。1年を残しての退職。春からは退職者に呼びかけ、ボランティアで市役所を支えるつもりだ。

 財政再建課の登坂康博さん(42)は勤続23年。財政再建計画づくりに携わった。身の振り方を妻に相談すると、「勢いで退職するのはやめて」と諭された。

 2月に計画がまとまり、千歳市の会社へ転職も内定し、退職を決めた。しかし、早期退職の募集締め切りに間に合わず、退職金が少ない自己都合扱いに。「辞めることに後ろめたさはあるが、僕にも家族がいる。前を向いていきたい」

 市の退職職者アンケートでは、2月末現在、再就職先が決まったのは18%にとどまっている。

 市民会館では午後、残る職員に異動辞令が手渡された。税財課主査の熊谷禎子さん(50)は、課長に昇進する。これまで部下はいなかったが、4月からは8人を束ねる。その中に、今年、男児が生まれた職員がいる。財政再建が終わる18年後、「その子に、どんな夕張を見せてあげられるか。がんばりたい」と話す。

 市民会館などの集会施設を始め、多くの公共施設も休廃止になる。

 閉鎖される五つの連絡所の一つ、南部連絡所では、地域住民10人が集まり、「南部連絡所」の看板を外した。退職する吉川真知子所長(59)は「今後はボランティアとして、地域のよろず相談をしていきたい」。来週から、住民は約7キロ離れた南支所でサービスを受ける。

 六つの共同浴場のうち、平和浴場も営業を終えた。いつも一番乗りする元炭鉱員の岩崎良信さん(84)は「寂しいが、時の流れでどうしようもない」と話した。

http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000703310005