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2007年03月31日(土) 00時00分

安全協定何だった 敦賀市長、厳しく批判朝日新聞

 関西電力と日本原子力発電が30日に国や県、敦賀市に提出した報告書で、新たな不正が18件明らかになった。原電は国の検査官の目をごまかす不正や、大事故時の生命線である緊急炉心冷却システム(ECCS)用水タンクの腐食・減肉を4年以上も放置し運転を続けていた。関電は美浜3号機の再発防止対策を実施中の今年2月、国に依頼された調査で虚偽記載があった。いずれも原発に対する信頼性を根幹から崩すような不正で、「これでは住民の信頼が得られない」と行政からは厳しい声が出ていた。(菱山 出、大崎敦司)

 ■県、敦賀市

 県庁では筑後康雄安全環境部長が関電、原電の幹部から報告書を受け取った。今回新たに明らかになった県内原発の不正は関電が6件、原電が12件。原子炉格納容器の密閉性を確認する漏洩(ろうえい)率検査では、原電が国の検査官の目をごまかすなど、法令に抵触する内容も含まれていた。

 筑後部長は「こういうことをやると、発電所の安全の根幹をなす信頼性にかかわる。非常に問題があり、深く反省してもらわないといけない。他電力の不正も自分の身と思って確認して欲しい」と注文した。

 敦賀市役所に説明に訪れた原電の頼敬常務らに対し、河瀬一治市長は「安全協定はいったい何だったのか。一度原点に立ち戻って協定を見つめ直したい」と述べ、今回の不正の原因究明や調査の中で協定に問題や改善点があれば、県と協議して協定の条文改定も視野に、近く立ち入り調査をする意向も示した。

 定期検査で国の検査官がだまされたことについて経済産業省原子力安全・保安院などに対して「事業者の言う通りにごまかされないような検査制度をつくってほしい」と全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)で要請などの対応を協議する方針を示した。

 ■日本原電

 「放射能の周辺環境への漏出を防ぐ防護機能での不正で、深刻に受け止めなければならない」。敦賀市役所で会見した頼常務は、敦賀2号機で97年、原子炉格納容器の密閉性を確認する試験で空気漏れをごまかして国の定期検査に合格していた不正を陳謝した。

 格納容器は、強い放射能を帯びた核燃料や原子炉などを収めた建屋で、事故時に放射能の拡散を食い止める「最後の防波堤」だ。定期検査で密閉性を確認する漏洩率検査が始まったのは同年7月。格納容器の出入り口(エアロック)の弁で空気漏れを確認したが、現場職員が上司の指示で近くにある閉止板でふたをしたという。検査官が発電所に到着した頃に不正がされ、3日後に予備の弁へ付け替えたという。

 頼常務は「電力事業者と国との関係では、定期検査をパスできないことは不名誉なことだった。職員には検査妨害とか重大な不正を犯しているという自覚はなく、軽い気持ちでやったようだ」と説明する。当時現場で不正を指示した責任者や実行した社員は特定できていないという。

 このほか敦賀2号機では96年4月、1次冷却系の配管で放射能を帯びた冷却水漏れを発見したが、国などに報告せず8カ月間運転を続けた。

 敦賀1号機では95年の定期検査中、ECCS用水タンクが腐食し、肉厚が必要最小限度の約3分の1の最低1.8ミリまで薄くなっていた。安全協定に基づく「異常事象」だったが報告せず、水位を低くして4年半も使用を続けた。新タンクへの交換まで運転ができなくなるため、修理せずに運転を続ける方針が決まったという。

 また、原電は敦賀1、2号機と東海第二原発の3基の原発で判明した同内容の運転データ改ざんを「1件」と発表していた。原電は「企業倫理、法令順守、安全協定の観点から深く反省すべき事案だ。工程優先やそれを容認する社内の雰囲気、説明責任に対する意識の希薄さがあった」とし、4月上旬までに再発防止対策を公表するとした。

 ■関西電力

 定期検査の最終段階で実施される蒸気発生器や加圧器の水位計、主蒸気の流量などの各種データが安定した運転状態であることを確認する総合負荷性能検査で、同じ個所にある複数の測定計器データにばらつきがあった場合、表示値を改ざんして合わせていた。不正は美浜、大飯、高浜にある関電の全11基であったという。02年に発覚した東京電力による一連の不正を受け、事業者の定期検査が義務づけられた03年10月まで続いていた。

 この改ざんを社内では「ドライバー調整」と呼び、恒常的に行われていたとみられる。不正を確認する書類は残っていなかったが、複数の職員の証言が得られたという。県庁で会見した鈴木聡・関電原子力発電部長は「合理的な説明が難しい許容誤差範囲内のばらつきがあった場合、理由を国の検査官に説明するのを避けようとする意識が働いたようだ。ごまかそうとしたのではないと思う」と釈明する。

 大飯3、4号機では、保安院から空気圧縮機の健全性調査を依頼され、今年2月、当直課長が運転員に対し、温度記録計を操作して記録を約50分間停止し、その空白部分に虚偽の記載をするよう指示していた。

 八木誠・関電常務取締役は「再発防止対策を着実に実施し、コンプライアンス意識の徹底に努めたい」と陳謝した。

http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000000703310003